家で親しい者が、外では上司である。非の無いように、兵士なのだからきびきびと。彼に状況を報告する度、奇妙な感覚になる。
「リオン様、数名負傷しましたが、こちらは殲滅完了しました」
「そうか、さっさとそいつらを連れて戻っていろ、僕から報告しておく」
「・・・分かりました」
リオンはシャルティエを鞘にしまうと、さっさと帰路につこうとしたが、ナマエの体の一点を見ると、すぐに顔をしかめ、立ち止まった。
「・・・お前もケガをしていたのか」
「・・・不甲斐なくて申し訳ないです」
少し油断していたせいで足を挫いたのだが、気付かせないようにしていた。だけどそれを看破する程の洞察力もあるのだな、とやはりリオンは凄いのだ、と再確認した所で。
「足を出せ」
「は・・・いや、大丈夫ですから」
「ぐずぐずしていると、他の奴等まで戻ってくる」
「ご、強引だなぁー」
リオンはシャルティエを取り出し、集中して、言葉を繰り出す。
「ヒール!」
最後にシャルティエのコアクリスタルが光ると、熱が遠のいていく、足をぶらぶら動かしてみると、痛くない。
「・・・有難う、そうだ、他の皆にもやってあげてよ」
「それは嫌だ」
「・・・皆痛いの、嫌だよ」
「他の奴等はどうだっていい」
「もしリオンが兵士の皆と同じ立場だったら酷いんじゃない?」
「嫌われてもいい」
「・・・う~ん」
彼は排他的に育ってしまった。・・・友人としては、彼をなんとかして、良い方に歩ませたいのだが、彼の「特別」のような感覚が嬉しい。あとは自分たちの関係を他の兵士には内緒にしてるところなんか、ちょっとスリリングでワクワクする。なんとかしたいけど、嬉しいしこのままでも…相反する感情を持ちながら、結局は現状維持。
「・・・あ、皆が来た、・・・じゃあ、またね」
「あぁ」
こんな事を思いながら接してるのがリオンにばれたら幻滅されるかな、なんて思いながら、さほど仲も深くない仲間の元へと走っていく、リオンの先程の言葉を伝えるからだ。なんとなくリオンを振りかえると去っていく後姿しか見えなかった。
*
帰ってくるのは休みの日だけ。それ以外は城で生活している。そして今日は休みである。ナマエは起き上がってうん、と背伸びをした。のんびりできるなあと自然と笑いながら、カーテンを開け、朝日を浴びると窓の外を見つめる。良い天気だ。さらに笑みを深める。
「手伝いにいくかぁ」
用意された服に袖を通し、髪を整えると、部屋を出て階段を降りる。今日はリオンも非番だ。
*
「リオン、おはよ」
「おはよう」
起きてきて当然のようにテーブルに座るリオン。馴染みのメイドと共に朝食を作っていたナマエは、出来立てのオムレツをリオンの前に置く。エプロン姿できびきび働くナマエを見つめ、リオンは目を細める。
「後は~っと」
甲斐甲斐しく、スープやサラダも運び、ナイフ、フォークとスプーンを二式置いた。自分も向かいの席につくと、手をあわせる。
「じゃ食べよう!」
「「いただきます」」
**
「リオン、今日はどうする?」
「別に・・・特に決めてないが?」
「だよなぁ・・・」
早速、朝食を食べ終えた二人は暇を持て余していた。
「そういや最近調子はどうなのか聞いて無かったよな」
「そうだな・・・」
「お互い、忙しかったからなー」
あはは、と笑うナマエに頷くリオン。
「それでも、昇進の話とかはなく、いつも通りなんだけどね」
「同じく、だな」
「何か面白い事があればなぁ」
窓を見つめながらそう言いながらも微笑むナマエ。その横顔をリオンはじっと見つめていた。
「お前は・・・」
「ん?」
「その、恋人でも、作らないのか」
リオンは視線を外した後、らしくもなく言葉を繋げながら話し出した。
「恋人でも、作れば・・・誰かと出掛けられて、暇つぶし出来るんじゃないか・・・?」
「女の子?ううん・・・」
言われて考え込むナマエをリオンは無表情で見つめる。
「出来ればそりゃ楽しいけど」
上を見つめて言葉を選ぶ。
「でも、俺・・・まぁ告られたことないし、それに好きな子もいないし、コミュ力はないわで、きっと長続きしないだろうなー・・・でも」
なんというマイナス思考の言葉の数々。リオンは何かそんな事無い等の言葉を言いたげだったが、真剣そうに耳を傾ける。
「リオンと一緒にいた方が楽しいんだろうな」
出来てもリオンの方を優先させちゃいそう、なんてな~と、恥ずかしそうに言う親友にリオンは一言「馬鹿者」と呟いた。