そんなやつだったのか。

※男装夢主です

黒曜の一件から、しばらく入院していた恭弥。復帰後、二人揃っての久々の応接室で「懐かしい?」なんて軽口をたたいていた時だった。

「ナマエ」
「うん?」
「君が好き」
「うん?」

それだけ伝えて、恭弥は普段通りソファに座ってテーブルに出席簿や日誌を広げ始めた。

「…私も恭弥が好きだぞぅ〜」
「そういう『好き』じゃない」

笑顔を作って向かいに座ると、作業をしながら恭弥は淡々と私の提唱する冗談説を叩きのめした。

「じゃあどういう好きだって?」
「…恋愛感情」
「恭弥、私はそういうの分からないし、こたえられないって分かって言ってる?」

普段から男女の恋だの愛だの、聞くたびに顔をしかめていた。
私が女だったら嫌だ!男の人でいて!雲雀さんとくっついちゃ嫌!なんて噂がたったらそりゃあ誰だって嫌になると思う。恭弥はその暴虐ぶりと反比例して人気がある。(ただし女子に限る)

私はただ、雲雀恭弥と志を共にし、肩を並べて歩いているだけなのに。

だから、当の本人にそんな感情を向けられていたのかと思ったら、裏切られたように感じた。勝手に信じてただけなのに。
恭弥も私と同じで、混じりっけのない純粋な気持ちで、私といるって信じてたから。
そうあるように、私は恭弥に何度も言っていた。
「わたしたちはそんな甘くてきらきらした関係じゃないのにね」と。
そんな話を耳にするはめになる恭弥にも失礼だと思っていた。
私たちを侮辱するな、と思っていたーー。

「よりによって雲雀恭弥が、私の想いを否定するなんてね」
「君がずっと、そう思っているのは知っているさ。でも、伝えるべきだと思った」
「知ってたなら、なんで伝えたのさ!」

聞きたくなかった。
人間的な感情、ましてや愛だなんて。

「このままが、良かったのに…!」
「君は、僕の気持ちは押し殺したまま、いつも通りのふりをしてろって言いたいんだ」

恭弥は視線をこちらへ向ける。その視線の受け止め方が分からない。そういう目で見られていると思ったら、恭弥がより、人間に見えて嫌だ。
たしかに、抱えたままは辛いだろうけど。でも、嫌だ。違う、恭弥はそんなこと言わないやつじゃなかったのに。そこまで思って、自分の醜い気持ちに気付く。
私の押し付けは…本当の彼を否定している?

「好きだ、それだけ伝えたかった。君が恋だの愛だの毛嫌いしようと、僕は好きだから」
「……好きだからこれからどうこうしようって訳じゃないんだね」
「僕だって今のままでいい、けど気付いてもらいたかっただけだよ」
「…そ」

そうか…そうか、と落ち着こうとしている私。向かいの恭弥は、いつものように日誌をまとめ始めていた。

「スキ!スキ!ヒバリ!スキ!」
「うおわー!!なに!?鳥!?」

窓から覗いていた小鳥も、黒曜事件が過ぎた後の変化の一つであることを後にひしひしと感じるのであった。