たたかう覚悟

「今日はリオン君のお弁当も作ってきましたよ!」
「…まあ、貰ってやる」
「お、素直じゃん、訓練が終わったら食べましょう〜」
『良かったですね!坊ちゃん!』

今日は午前中だけリオン君と訓練になっている。午後からはフリーではあるが、クエストをこなすなど、有意義に時間を使わないとなあなんて意識している。さすがにセインガルド中、それに私自身ピリピリしているので、午後はまるまる昼寝にしたりは出来ない。ほんとはしたいんだけどね!

術の威力コントロール訓練は、訓練用かかしを用意してもらった。手作り感満載で愛嬌もある。躊躇しながら術を使ってみたが、傷一つつかない。それに疑問を感じ、全力の術を叩き込んでみた。…ビクともしなかった。…ゲームでよくある、どんなダメージを受けても0にするやつか??これ??
この子、どういう素材で作られてるの…とリオン君に聞こうものなら、僕に聞くなと話すことを拒絶される始末。
これを盾にしながらカイムと戦えばいいのでは…?駄目…?

ある程度は、意識しながら術を放てば、イメージ通りの威力になるようになった。
しかし、これが実戦となると、意識する余裕がなくなるかもしれない。力み過ぎて周りの仲間を巻き込んだり、逆に焦って弱い攻撃になるかもしれない。それに、生き残る事に必死になりすぎて、…カイムを殺してしまう…ことは普通の術では無理かもしれないけど、っていうか逆に殺されるかも、しれないけど。…やっぱり怖いなあ。命のやり取りをする覚悟は、出来ない…。甘すぎるのか。覚悟しないと駄目なのか…?
ミクも生身の時はどうだったんだろう。聞いてみる事にした。

「ミクも、前はバリバリ戦ってたんでしょう?」
『あぁ』
「覚悟はしてました?…相手の命を奪う覚悟、こっちが殺されるかもしれない、覚悟…」
『…さあな』
「誤魔化さないでくださいよ」
『そんな事考えていなかったかもしれん、…ただ己の野望、それを叶える為だけに生きていた』

…野望を成就させてやるんだ、という気持ちだけで、戦えるのか。…それだけ強い想いだったのか。リオン君も、シャルも黙り込む。
覚悟する、しない、って白黒した問題じゃ無いよなあ…。そりゃあ。

「そうか、…私も、みんなでカイムに勝つって気持ちだけで臨んでもいいのかも…うん、うん…」

その想いだけは、変わらない。みんなで生きて、カイムを倒す。今はそれでいい。

「うん、なんか吹っ切れてきたかも。参考になったよ、ミク」
『…貴様らしく無い、なんだ、気持ち悪いぞ』
「私だってねえ、素直でピュアな時もあるんですよ?」

みんなして「ピュア…」と言葉で繰り返された。私、ピュアじゃん?え?あれ??なんでリフレインした??

「…ま、まあ、手応えも掴めてきたし、次へ進めそうかも。…ただ、実戦でも出来るかはさておき」
「さておくな。…威力をコントロールする事で、相手の油断を誘う事も出来る。うまく使えば、敵の行動を思うように操る事も可能になる。重要なテクニックなんだぞ」
「なるほどしか言えねえ…」

弱めの術を打つ事も時には大事なのかもしれない。誘い込みたい時は弱い術を連発して、勢い付かせるのもありかも…。戦術なんかも考えながら戦う事を知る。奥が深い。