仲間たちの目に熱意がこもり、世界を無に帰す存在に立ち向かう覚悟を決める。
再びタルタロスの頂上を目指すことになったが、活気ある仲間の輪の中にナマエの姿はない。
桐条先輩が自分を呼ぶ。ナマエの様子を見てきてくれないか、と頼まれた。勿論、自分以外に適任はいない。
ラウンジから階段を登り、通い慣れた部屋のドアをノックした。「開いてるよ」と返事されて、静かにドアを開ける。
ナマエはベッドから体を起こして、部屋の窓から空を眺めていた。
死の恐怖から立ち上がることは容易ではない。ナマエは眠ることが多くなった。たまに、一緒に外に出るがそれ以外は自分の部屋のベットで外を眺めているか、眠っているか。
「……綾時が言っていた、敵を倒すよ」
「そう…」
これからどうするの、と問われ、言い難いながらも正直に答える。タルタロスの探索を再開したことは、気を煩わせるだろうと言わなかった。
眩しそうに目を細めて、穏やかな顔を向けるナマエ。そんな目を向けていたのは、かつての俺だったのかもしれない。
「ごめんね、私はもう戦えない」
「謝らなくていいよ、ナマエはみんなを見守ってくれたらいい。あとは俺たちがなんとかするから」
「理、成長したね」
面と向かって褒められ、下を向いてしまう。「そんなこと」とうまく返事できずにいると、「おいで」とベッドの脇をぽんぽん叩いている。ここに座れということだろうか。
おずおずと言われるまま、ベッドのふちに座る。顔をナマエの方に向けると、あたたかな手が頭に乗せられた。
「理は偉いね」
子供扱いされているようで小恥ずかしい。「ナマエ」と咎めるように声をあげると、視線がかち合う。
夢見心地にとろんと微睡んでいるように見える、ナマエの瞳。こんなに近くで見たのはいつだったろうか。
ぱっと思い浮かんだのは夏の夜だった。シャドウに誘われるまま、唇を合わせたあの日。
「ねえ、欲しいものある?」
「は…」
邪な考えを見抜かれているのか、ナマエは微笑む。
「私にできること、何でもしてあげるよ」
自分の恋心に気付いている。じわりと汗ばむ手を握って、「何でそんなこというんだ」と震える声で問うた。
「頑張ってるご褒美だよ」
ねえ、とナマエの顔が近づく。「どうしてほしい」と微笑むのに、目が逸らせない。
「どうせ全部終わっちゃうんだし」と瞳の奥で泣いているのに気付いたのは、ずっと後だった。