※女刀匠との百合になるよてい
真剣少女達をまとめる役目を命じられた割には、彼女達がかなり自由な行動しているのに、やっと気付けてきた。
大役に戸惑ってばかりで周りが見えていなかったのかも、私ってば指揮者失格…と落ち込んだのは一瞬だけで、行動を制限する訳にもいかないし、私悪くねーな、仕方ないね!とすぐ開き直ることに成功した。
まずはリーダーである歌仙むつみちゃんの様子をちゃんと見つめることにした。
何故彼女がリーダーかというと、年下の子達をまとめる役割をまともにこなした事のない私がドSっぽい彼女(今なら確実にドSだと断言できる)なら、なんかみんなを仕切ってくれそうだな!と勝手に思い込んでいたから。任命して早々「この私がこの子達を調教するの?」と嫌そうに言われてしまって、あれ?人選間違えたかな?と早々と冷や汗をかいていたのだが、むつみちゃんたら、割と面倒見がいい。厳しい言葉が多いものの、しっかりしているからか、私以上にちゃんとみんなをまとめ…締め上げている。
最近は対、たいまちゃんとの会話を聞いた。
たいまちゃんは、屋敷のお母さん的存在。優しいし面倒見がよく、料理に裁縫が得意と、なんとも家庭的要素をたくさんに持った女の子である。
「あの子達を甘やかしすぎない方がいいわ」
放課後体育館裏に呼び出された感じにしか見えない。むつみちゃんだからか、さらに恫喝っぽい。
「うーん…そうね、でも私、こういうのが性分みたいだから改めるのは難しいわ」
たいまちゃんが困っている。
確かに、よくこけてしまい服をぼろぼろにする、はこちゃんの服を縫ってあげてたり、書道でこれまた服を汚しがちのくにとちゃんの服をよく洗濯してあげてたり、世話焼きではある。だが、それがたいまちゃんの良いところではある。
…止めるべきか、と思いながら、まだ様子を見ていた。
「飴と鞭ってあるじゃない、貴方のは飴だけ求められるだけ与えて肥やしているようなものだと思うのだけど」
「それも、そうかもしれないけれど…」
ため息をつくむつみちゃん。これは…。思わず足を踏み出した時だった。
「…貴方も飴をもらう側というのを忘れない方がいいわよ」
「…むつみさん」
「あのポンコツにでも甘えていいんじゃない?」
「…むつみ様、すみませんでした」
むつみちゃんの親指が示した先に飛び出しかけた私がいるわけで。ば、バレてた。しかも疑ってしまった。…すみません。ポンコツは謝罪しかできない。
「…むつみさん、刀匠さんも、ありがとう。今度好きなおかず作ってあげるわね」
「あ、本当!?じゃあ…」
「貴方が言うところかしら?」
「ひえーむつみちゃんの好きな十六穀米って言おうとしたから!私のじゃないから!」
ひと息で言い訳すると、むつみちゃんが目を見張った。たいまちゃんは顔を綻ばせながら手を合わせた。
「あら、そうなの?むつみさんて本当に六がつくものが好きなのね。じゃあ今度仕立てておくわね」
「ありがとう!私もたまには手伝うからね!みんなも手伝いたいって言ってたから色々声かけておくね」
「えっ、そうなんですか?…ありがとうございます!」
「…ふん」
って事があった。根はいい子なのだ。そこで本気で、ちゃんとみんなを見つめようと思ったのだ。個性豊かな彼女達を本当の意味で理解しよう。
現に、みんなむつみちゃんがリーダーで不平は無いみたいだし、怖がりのふくらちゃんも怯えながらも、「実は、いいお姉さんですよね…!」と口にしていた。その後話を聞いていたのか、今度はむつみちゃんご本人が出てきて「実はってどういう事かしら」と詰問が始まった。震えるふくらちゃんの盾になりながら弁解したけども。
むつみちゃんの様子をさらに見つめる。出陣の際は嬉々として憑喪を叩き斬ってるなー。鍛刀する時めっちゃテンションあげてくれるなー。
「むつみちゃん、どこ行くの?」
「私がどこへ行こうと貴方に関係あるかしら」
「むつみ様、どこ行くの?」
「言い直しても無駄よ。敬語も無いし中途半端だし…。言わない、秘密よ」
黙って、一人でよく出かける事が多いな。
刀を研ぐのが終わった後、早々に私の手から歌仙兼定を奪って去っていこうとする。背中に向けて話しかけたが、行き先を教えてくれなかった。
そのままついてったらお仕置きされそうだし、どうしたものか。その後屋敷中を探しても、彼女は見当たらず、帰ってきたのは夕方だった。外は憑喪がいるのに、大丈夫かな。心配しても「私を見くびらないで、大きなお世話よ」と言われそう。絶対言いそう。脳内でそれらしいお叱りの声が再生される。どうしようかな、と思案しながら夕食の席に着く。
今日のご飯は丁度、あの時のリクエストの十六穀米だった。おかずは味噌汁、たくあんに、近くの川で採れた魚を焼いたもの。
いただきまーす、とみんなで手を合わせてご飯を頂く。
「今日はね、にかがたいまちゃんのお手伝いをしたんだよ〜偉いでしょ!」
席は特に決まっていない。今日は私の隣に、にかちゃんが陣取る。二つに束ねた髪を揺らしてにっかり笑顔で話しかけてきた。思わずこちらもにっかり。
「そりゃあ偉いね、たいまちゃんも助かったろうね〜」
「ええ、にかちゃんが一緒に手伝ってくれて、助かったし、ご飯作りも楽しかったわ」
誰か手伝ってくれると嬉しいし楽しいよね。みんな、ご飯作りを進んで手伝ってくれて良かった…!
「えへへ、これからも手伝うからね!あ!にかねー、このたくあん切ったんだよ」
「ほう!よく切れてるね〜切れ味鋭いね〜こりゃ良いたくあんになったねー!」
ひとつ箸でつまんで口に入れ、「うん!美味しい」と伝え、ぽりぽりと音を鳴らすと、にかちゃんは得意顔をみせる。
賑やかな食卓って良いな…。
ふとむつみちゃんを見てみると、やはり好物だからか、お茶碗を減らすペースが早い。私の視線に気付き、何よ、と言わんばかりの視線を向けるむつみちゃん。
「十六穀米の感想はどう?」
今回手伝った訳じゃないのにドヤ顔のやつ。それが私である。
「…ふん、…まあ、上出来じゃ無いの?」
「ありがとう、むつみさん」
少し頰を赤らめて、そっぽを向くむつみちゃん、私はそれを見て無意識にガッツポーズを作っていた。即座に白い目を向けられる。
「なんでさ」
「貴方って時々、蹂躙したくなる事するわよね」
「なんかごめん」
「全然反省していないでしょう」
なんかごめん…そう反復しながら私も十六穀米を一口含む。
たいまちゃんが土鍋で炊くご飯は、もうそれは美味しい。米に甘みがあるし、炊き加減ももっちり柔らか。今日も最高に美味しくて、このご飯のために今を生きている感じはする。
となりのにかちゃんも、ご飯をもぐもぐしている。よく見たら、口元にご飯粒が付いていた。
「にかちゃん、ほっぺにご飯粒ついてるよ」
「ほえ?本当?」
ご飯粒がついてる方ではなく、反対側のほっぺを指でこするにかちゃん。
「反対だよ〜」
私も自分のほっぺを指さし、教えてあげれば、すぐに小さな指でご飯粒を取る事が出来た。
「あっ取れた、ありがと、刀匠さん!」
にかちゃん、にっかり。お姉さんもにっかり。