※死ネタ・転生
意識が遠のく中、濁流に呑まれるエミリオが離れていくのに必死に手を伸ばしていた。想いが届かなくとも、せめて一緒に息絶えれたら。
やっとの思いでエミリオの手首を掴んだら、「もういいか」と溜めていた息を吐き出した。
エミリオは私を見つめている。意識があるのか、もうないのか分からないが、心なしか目を細めて、穏やかに笑っているように見える。
「馬鹿なやつだ」
声が聞こえた。
国を、仲間を共に裏切ってから何度この言葉を聞いたか。脳裏に浮かぶのは、仲間だった兵士を殺して飛行竜を盗んだとき、神の眼の封印を破壊するとき、海底洞窟でスタン達を待つあいだ。泣きそうなくらい、くしゃりとした顔で吐き捨てるエミリオの姿。
そう、馬鹿なやつだ、私は
ヒューゴに拾われ、エミリオの世話係を命じられて以来、ずっとエミリオの為に生きてきた。
少しでも報われたら、なんて期待も何度も押さえつけて潰すことになる。
彼の想いは、マリアンに向けられている。
だから、いつか離れる間まで、そばに居られたら良いと思っていた。
願いは叶った、嬉しい、これで良かったんだ。
エミリオの言う通り、私は馬鹿なやつだ。
「お前、誰だ」
懐かしい声に目を開けると、目の前に小さなエミリオが立っていた。布を巻いたシャルを抱きしめている。
手入れの届いたヒューゴ邸の庭は変わらない。私は今まで庭の木に寄りかかって眠っていたのか。
みんなを裏切ってから死ぬまでが全部夢だったのだと見まごうほど穏やかな景色。その内しゃがみこんだ幼いエミリオを眺めていたら、自然とぼろぼろ涙を流していた。
「なんで、泣くんだ」
エミリオはぎょっとして立ち上がると辺りを見渡す。
「どうしたらいい、シャル。……え、ハンカチ……?うん、分かった」
おそるおそる、「これ、使う?」とポケットから差し出したハンカチを手に取った。変わらない、ほのかな薔薇の香り。
「ありがとう、エミリオ」
「どうして、僕の名前……」
今までとこれから。どちらが夢か判断できないが、今はこの夢を満喫したい。
「私はナマエ。今度は絶対に私がエミリオを守るよ」
私が最強のエミリオ絶対守るマンになるとは、この時誰も予想できなかったという。