「なぁ、リオン、やめないか?」
「何故だ」
少年達の囁き。
「いけない事だろう」
「どうしていけないんだ」
「どうしてって・・・」
美麗な少年が身を乗り出すと、もう一人の少年が恥らいながら、口を開く。
「俺達のバレンタインチョコを全部溶かすとかさぁ・・・」
「ふん、関係ない、僕達の為なのだから」
「いや~、…やっぱ溶かさなくたって・・・」
「うるさい!大体お前が・・・ッ」
「あ~はいはい…ごめんごめん」
リオンは真っ赤になって怒るのを、ナマエが慣れた様に抱きしめ、ポンポンと背中を叩く。リオンはぐぬぬ、とナマエの硬い胸を堪能すると、さっきよりかは機嫌が良くなった。
「リオンは俺からのチョコしか受け取らないって決めてたのに、俺がほいほいリオン宛のチョコを代理で受け取ったのは悪かったよ」
「お前宛のチョコもあった・・・」
そりゃあ、付き合いだして初めてのバレンタインだし、ナマエはリオンへチョコを送るべきなのかと悩んではいた。しかしここ連日残業でチョコを作るなどという余裕もなく、(やっぱり作るべきか!?と(物理的に)重い腰をあげた頃にはチョコも売り切れていたし)まあいいか…。リオンからもらえるだろう、なんて楽観視していれば、当日女の子たちにリオン宛のチョコを押し付けられるわ押し付けられるわ。断る術もなく走り去る子が多いし、一生懸命作ったんだろうな…、って思ったらやっぱり断れなかった。優柔不断だと自覚はしている。へとへとになりながら大量のバレンタインチョコを持って家へ帰還した際は、玄関先でリオンが仁王立ちしており、「僕はお前のものしか受け取らないと決めていた!!」と激怒した。そしてリオンはチョコを作ってなかった。やっぱりこの子亭主関白…!それからリオンの癇癪を抑えるのに大変だった。
だけど甘いもの好きなリオンにチョコを捨てるという選択肢はなく、(勿論もったいない)「チョコに罪は無い、気持ちは受け取らないがな」という言葉をきっぱりと放ち。包装を破る作業をしていた。可愛らしい包み紙の残骸に目を向ける。その中には「ナマエさんへ」と宛てたカードが何枚か入っているのだ(大体はリオン宛だが)
「…悪かったよ、まさか貰えるなんてな~って浮かれてて」
「僕というものがありながら」
「分かってる。…お前が俺の一番だよ」
頭を撫でてやると目を細めるリオン。いちゃいちゃしている横で、ごうごうと煮えたぎるチョコ達。
**
「…これで、チョコケーキ何個作れるんだろうな…。どうしよ」
ナマエは遠い目で冷ましているチョコ達の入った鍋を眺める。大きめの鍋二個分。チョコレートフォンデュでも、ココアでもなんでもいいから自分が責任を取って、リオンに作ってやらねばならない。パティスリーの厨房かと見まごうばかりの甘ったるいにおいのする中、考える。楽にこの鍋を処理する方法を…(女の子たちごめん)
「どうすれば楽に処理できるか教えてやろうか」
「是非!!」
腕組みしながらナマエを見つめるリオン。同じ考えをしていたか。リオンにすがりつくと、まず鍋を風呂場に持っていけと言われる。「えっ…」と嫌な予感がして思わず声が漏れる。
「何度も言うが、無駄にはしないつもりだ」
「…ならいいけど。…分かった、持ってくよ」
リオンのいう通り、重い鍋を抱えて風呂場へ。二個とも運び終えた頃、リオンは私服に着替えていた。どうしたよ、と聞けば「お前は浴槽に入っていろ」と言われる。はあ、と言われるまま浴槽に入る。おもむろにリオンが鍋を持ち…。
「わぷ」
突然、視界が茶色くなった。なにがおこったんだ。体にぬるいどろっとした液体の感触。…鍋を逆さに持つリオンさん。捕食者のまなざし。
「り、リオンさん?」
「美味しそうだな」
「俺が!?おいしく頂かれる感じですか!?」
「そうだ、黙って舐められていろ」
「いやあああッ!!!むぐう」
リオンが唇を奪う。いろんなところに舌を這わす。……その後、本当に、文字通りおいしく頂かれたのだった。