女の子長谷部の告白

縁側で休憩しようとしていた所、毎回タイミング良く長谷部はお茶を運んでくる。最初は湯呑を一つだけお盆に乗せて持ってきていたが、私が口をすっぱくす る程2つ持ってこいと命じた為に、ここの所二つ湯呑を持ってきて一緒に縁側に座っている。相変わらず長谷部は私の後ろに控えるように座っているが、これも 「主命」を使ってやめさせるつもりだ。お茶を飲んで、当たり障りのない事を話して、さて、切り出してみるか、という所だった。
女性同士の恋愛って、どうなのでしょうね。曖昧な表現を使う印象がなかった長谷部が珍しく、言葉を濁しながら私につぶやいていた。
思わず振り返る。長谷部は真剣な表情で床を見つめていた。なんと、長谷部に気になる女の子が…!?驚きながら、考える。昔はタブーとされていたが、今は同性同士の恋愛も認められつつある。そんな時代に育ってきたからか、私の頭も固定観念に縛られない程には柔らかい。

「いいんじゃないの?応援するよ、私」
「お、応援…」

庭に向き直ると、なんとなく緑茶を一口飲んだ後、私もつぶやく。あの長谷部が恋愛をするとは、嬉しい。でも、私に一辺倒だったからこそ寂しい気持ちもある。ごちゃごちゃとした気持ちになっているが、心からの言葉を話したつもりだ。
だが、後ろの長谷部の声色は思ったより暗かった。まるで応援されるのが嫌みたい。どうしたのだろう、と再び振り返ってみれば、青い顔の長谷部が「あの、えっと」と一生懸命言葉を探していた。

「ゆっくりでいいよ」
「あ…」

長谷部を安心させるのもあったが、私の心の準備も兼ねていた。どんなことを言われようと、平気な顔ができるように。変な期待もするもんじゃない。
青かった顔の色が元に戻ってきたと思いきや、今度は赤く染められていく。長谷部は私を真摯に見つめている。むくむくと変な居心地の悪さも生まれてきていた。

「あの」
「うん」
「あるじ、…貴女の事が、好きなんです」

長谷部は告白をした間だけ、私の目を見つめていた。だが、喋り終えるとすぐにその藤色の目は床に向けられた。うろうろと視線をさ迷わせて私の言葉を待っている。
耳まで真っ赤にして、長谷部、かわいい。
膝の上で固く握られていた拳に自分の手を乗せた。震える体。「あるじ」吐息まじりに私を呼ぶ声。

「お嫌じゃ、ないのですか?」
「別にお嫌じゃないよ?」

身を縮ませた長谷部に体を向けると、そんなに握りしめないの、と、指を使って拳を解かせる。長谷部の手袋の、布の感覚が手に残る。

「私も好きだよ。長谷部とだったら、いいよ」
「あ、主…っ」

長谷部の膝の上に涙が落ちていく。彼女自身の涙だった。そんなに嬉しいのか。桜まで降ってきた。

「私…っ、うれしいです、あるじ、あるじ…っ」
「うんうん、良かった」
「これからも長谷部を、お傍に置いてください…」
「勿論!」

頭を撫でてあげると、その内抱きしめられていた。柔らかい体と体、触れ合うのが気持ちよかった。
しかし、私たちは知る由もない、これから桜が縁側を埋め尽くさんばかりに積み重なっていくことに…。