寒中お見舞い~中~

 あのお通夜みたいな食事は一生思い出に残るだろう。とりあえず黙々と食べ出した私、何も言い返せず黙り込んだリオン君(まったく食べないから無理やり口に突っ込んだら食べ始めた)。まったく気にせずぱくぱく食べるスタン君、気まずそうな女性二人…。
 そんな兵士の人達を酷使させていたなんて、リオン君。なんと声をかければいいか分からなかった。でも、リオン君の心にスタン君の言葉は響いている。
 兵士の人の気持ちを案じるというより、隊長としてどうなんだ、とディムロスが問うていたのも彼には率直に響いたと思う。
 ふらふらと部屋に戻っていったリオン君を見送った後、私は女子部屋に戻った。

「っーーー…食べましたねえ~」
「食べましたねえ…って暢気すぎ!あの空気、死ぬかと思ったわ」

 どっかりベッドに腰を下ろした私に呆れたようなため息を吐くルーティさん。ちなみに私はビーフシチューもパフェも食べた。美味しかったです。

「リオンさん、明日の会合は大丈夫なんでしょうか…?」
「ああ、あいつは仕事ならちゃんとやるから心配ないわよ」
「…でも、かなり落ち込んでらっしゃいました…」
「まぁまぁフィリアちゃん。もし明日も愕然としてたら、喝をいれればいいんです」
「喝、ですか?」
喝!!って」
「そのままじゃない」

ルーティさんが呆れたように肩をすくめた。そういえば、とルーティさんに詰め寄る。

「エミリオって何だったんですか?」
「……何でもないわよ」
「なんかあるやつだ。え~気になるなあ~」

固まって、少しして顔をそらされた。分かりやすすぎやしないか。

「ま、まぁまぁ、ナマエさん、誰にだって触れられたくない事はありますわ。…でもリオンさん、ルーティさんの事とても慕ってらっしゃるんですね」
「ありがとフィリア。んー…、そーかしら…」
「私、兄弟がいないので羨ましいと思いました」
「フィリアちゃん、ひとりっこなんですね」
「えぇ」
「そっかあ。ルーティさんとリオン君の関係、いいですよね。なんやかんや想ってくれてるって、いいね」

普段ルーティさんに対してもツンツンしているリオン君しか見たことがなかったから意外ではあった。姉さんってそんなにに呼ばないし。(大体名前呼び捨て)そういえば名字違うし…。照れ隠しなのかな!フィリアちゃんに同調していると、ルーティさんが「あいつ、いつもそんな素直じゃないもの。まさかあんなことを思ってるなんて…」と苦労人のような顔を見せる。自由奔放なルーティさんに似合わない表情である。

「そんなにスタンさんはルーティさんの(有料)手当てを受けに来てたんですね」
「まあ…ね、ほぼ毎日」
「マジか…。それならスタンさんがルーティさん目当てで…って勘違いしちゃうかもなあ…」

これをきっかけに、より隊長らしくなれるように。リオン君の良い変化になればいいなあ。
ちなみにこの後、クレメンテさんはケースへ、ミクトランを外につるしてから部屋着に着替えて、フィリアちゃんの持ってきたバルバ抜きをした。白熱した勝負であった。(ミクトランの事を忘れていたので寝る前に窓から回収した。めっちゃ怒っていた)

**

そして夜が明けた!
浮かない顔のリオン君を呼んでから、スタン君の部屋の前へ。何度かノックしても、反応がない。

「玄関にもいらっしゃいませんし、まだお部屋にいるのでしょうか?」
「もうそろそろ出発しないと約束の時間に間に合わなくなるわよ」
「部屋に入ってみませんか?」
『普通、鍵をかけてるんじゃないのか』
「鍵がかかってないんですよ。ほら開いた」

警戒感がないのか、鍵の存在を知らなかったのか、スタン君の部屋のドアが開いた。リオン君がこれでもかと顔をしかめている。部屋にぞろぞろ入っていくと、ベッドで気持ちよさそうに眠っているスタン君がいた。

「スタン君朝ですよ~起きてください~」

声をかけながら部屋のカーテンを開く。空は快晴。絶好の会合日和(?)それでも寝続けるスタン君。

「早くしないと遅れるわ!もう!このスカタン!!」

ルーティさんがスタン君のパジャマの胸倉をつかみ、揺さぶるも、なおも眠り続ける。これでも起きない…!?みんなが慌て始める。

「こうなったら、晶術を使うしかない」
「えっ室内でそんな、本気ですかリオン君」
『背に腹は代えられませんからね』

うんざりした顔でシャルを取り出すリオン君。何故かシャルの声は弾んでいる。

「ピコハン」

ピコッと鳴る、あのハンマーがひとつ、頭上からおちてきた。スタン君の頭に落ちて、軽快な音を鳴らす。
だが、起きない。

「ピコハン」

も一つ落ちてきた。だが、起きない。

「……ピコピコハンマー!」

部屋の天井ギリギリまで大きなピコピコハンマーが振り下ろされた。さすがにこれには起きざるを得ないスタン君。リオン君の私怨も入っていたかもしれない。
急いで着替えてダッシュでお城へ。フィリアちゃんと私は息を切らせているが、リオン君らはそこまでしんどそうではない。これが運動神経…、戦闘経験の差であろうか。謁見の間に着くと、イザーク王とその嫡男、ウッドロウ王子が出迎えてくれた。イザーク王の腰にはイクティノス…(だったっけ)が提げられている。(めっちゃソーディアン同士、再会の喜びを分かち合っている)
ギリギリに着いて申し訳ない旨を伝えておく。ウッドロウ王子が「なに、気にすることはない」と言ってくれたので、大丈夫のようだ。

そして、本題へ。イザーク王、ウッドロウ王子へ、カイムについての情報をお伝えする。

奴がしでかしたことについては、手始めにカイムはモンスターを使って飛行龍を奪取。そして、ダリルシェイド近隣の村人を拐う。カイムと初めて対峙した際、一部の村人は晶術を用いて解放できたけど、いまだに戻っていない村人もいる。その後、ストレイライズ神殿からも飛行龍を用い、神の眼を奪った。奴の定めた日に天上での決闘となるが…。

そして、カイムについての情報。
体内にレンズを多量に含んでいるようで、強力な晶術を使える。カイムが晶術にあたると体内のレンズが反応して、体がへこむも、すぐ回復してしまう。全てを消し去る最強の晶術を「ブラックホール」で奴を止める為修行中。

「…まず、『天上での決戦』についてだが、カイムとやらは、ダイクロフトについて知っておるまいな」
「ダイクロフト…」

リオン君やルーティさん、フィリアちゃんはイザーク王の言葉に顔を曇らせた。スタン君はいつもののほほんとした顔であるが、はてなを浮かべているような気がする。私はまったく知らんぞ、ミク。

『…私たちが生きていた当時、彗星の災害に見舞われたことは知っているな』
「ああ、うん…」
『災害で粉塵が空を覆い、粉塵よりも高き場所に新たな地表を築き、そこに生活の拠点を移そうと人々は考えた。そこで、ダイクロフトは人々の居住地として開発された』
「ほうほう、で、それが?」

いつになく親切なミクの説明を聞こうとするも、ディムロスの怒号が響く。

『貴様…!よくもぬけぬけと!!貴様がダイクロフトを占拠し、クーデターを起こしたせいで天地戦争が始まったのだぞ…!!』
「へえ~…って結構大変じゃないですか。おいミク何やっちゃってんですか」
『フン、今吠えたとて、何も変わらんだろう」
『ッ…!』
『ディムロス、抑えて。…今は説明してもらいましょうよ』

ソーディアン内の内輪もめ(たしかに敵対していた首謀者が仲間とか無理よな)である。

『…ダイクロフトは天地戦争が終わってから海中に沈められたが、『ベルクラント』も備え付けられているはずだ。ベルクラントは神の眼を用いると地表を削るエネルギー波を放つことができる。削った地表をもとに天上に大地を作る目的で使用されていたが、その威力から兵器としても使用できる代物だ』

聞いているうちに、カイムがそれを知っていたらやばいのでは、と体が冷えてきた。奴の言う天上て、ダイクロフトを復活させたり、…ベルクラントで作った大地とかだったり…。嫌な予感がする。

「そなたが、ミクトランのマスターか?」
「はい…」

そうか、イザーク王とウッドロウ王子はソーディアンの話が聞けるのか。新たなマスターが現れる度に新鮮な気持ちになる。

「……ミクトランが同じ志を持った敵と相対した時、どう思うだろうか?」

イザーク王から鋭い言葉が放たれる。これは敵方につかないか疑われているな。
ソーディアン同士だと、もちろんさっきのやりとりからも分かるように、警戒はされている。マスターのみんなは優しいから言わないだけで、ミクが自称天上王だけに仲間として扱って大丈夫か心配な面もあるだろうなと、思っていた。他国の王ならそりゃズバッというわな。ここでみんなの疑念を晴らすチャンスよ!ミク!

「…たしかに、カイムからミクトランのソーディアンマスターに相応しいのは自分だと言われたり、ミクトランにだけ寝返らないかと勧誘してました」
「おい、初耳だぞ」
「そっと胸にしまってたんですよお」
「ナマエ…。報・連・相をしっかりなさいよ…」

すまんかった。気を取り直して…。

「ミクトラン自体一回カイムに奪われかけたことがあったんですよ。でも私の機転で取り返せて?で、その時ミクってばカイムに向かって『お前より、あいつはなかなかに面白い奴だ。…私が行く末を見たいと…』」
『おい!言うな!わーわー!!!』

ミクトランが慌てふためく。ちょっと恥ずかしいこといってたもんね。私にとっては嬉しかったので一言一句も聞き漏らさずに覚えているよ!

ぽかんとするファンダリア王。ウッドロウ王子にいたっては微笑ましそうにクスクスと笑いだした。(ちなみにルーティさん兄弟は呆れてるし、フィリアちゃんとスタン君は目をきらきらして「わぁー」って顔してる。ソーディアンのみんなはマジか…あのミクトランが…と言わんばかりの言葉を発している)

「…父上、彼女はミクトランをうまく扱っているようですね」
『ぐっ…!ぐぬぬ…!!』

凄い不満そうなミク。だが、言い返せない。そういうところだぞ!

「…そう、だな。すまない、ナマエ殿」
「いえいえ、この調子で仲良くやっていこうと思っています」

疑念を取り払ってくれて良かった。ふう、と胸をなでおろす。
話を戻して、カイムがダイクロフトについて知ってたらどうしよう、という所に。ウッドロウ王子が発言をする。

「父上、カイムにダイクロフトが埋まっている場所が把握されているか現時点では判断できません。それに、もし知っていても、一人で…いえ、モンスターをもってしてもダイクロフトを引き上げる方法が私でも思いつきません」
「そんなにでかいんですね」
『……まあな。私だったらダイクロフトを回収する為に工場を作り、レンズエネルギーで動く機械や機械を管理する人員を総動員して工場内へ引きあげる。そこへダイクロフト内に神の眼を搬入する。そうすることで空中に浮かび、移動できるようになるからな』
「レンズエネルギー?な、なんか凄い壮大な話してますね…。お金かかる~」

カイムはモンスターは操れるけど、それで海から引きあげられるか…全然想像できない。それに沈めた場所はソーディアンしか知らないだろうし、望み薄か。今度会ったら決闘場所の天上ってどこ予定してますか?って聞いてみよ。…決闘の前に会えたらいいね。

「そうだな……。心配をしすぎていたか。ただ、用心はしてほしい」
「勿論です。…ファンダリア王よ、この世界を支配しようと画策しているカイムを倒す為、決戦の際、お力添えを頂けますか」

リオン君の言葉に、私たちはファンダリア王に注目する。

「あぁ、無論。…ファンダリア兵は、ファンダリアの村々を守るために配置しており、セインガルドへ人員を割けられないのは申し訳ないが、決戦の際は…ウッドロウとイクティノスを向かわせる」
「よろしく頼む」
「ご助力感謝いたします」

決戦の際、ウッドロウ王子に共闘してもらえることになった。仲間が増えたよ。

「ウッドロウには、セインガルドで君たちソーディアンマスターと鍛錬を共にし、力をつけてもらおうと思う」
「というと…ウッドロウ王子にセインガルドに滞在して頂くということでしょうか」
「ああ、そうなる。この会合が終わり次第、一緒に連れ帰ってくれ」
「……かしこまりました」

リオン君の声色が上ずっている。確かに他国の王子を急に預かることになるとは。…どこに泊まるんだろうな~と私は関係ないので気楽である。