小話集めました

☆そのころ、ルーティは
「…何々、え、え!?新しいマスター見つかった!?」
『声が大きいわ、ルーティ、不審者に間違われるわよ』

ああ、またかと思いながら手紙の封を切って。中身を丁寧に取り出した。
しかし父さん、母さんからのお節介な手紙には、いつものような話ではなく、衝撃的な内容が記されていた。
そのせいで私は宿泊中の宿で隣の誰かから壁を叩かれた。皮肉にもその壁ドンによって、少し冷静になる自分。

「…そうね、ちょっとビックリしすぎたわ」

アトワイトは今腰掛けているベッドの枕元に置いてあるから、こちらの手紙の内容は見えない。だからアトワイトにも教えてあげるように、自分自身理解する為にも、控えめな声で文をまとめた内容を話してみた。

「…ミクトランのマスターが見つかったらしいわ…どうやら、女の子みたいだけど、複雑な事情がある子で、海でびしょぬれになってた所をエミリオが保護した…みたいね、ううん、何よそれ…」

アトワイトは最初の私の反応で、マスターの事は分かったのだろう。
「あら、そうなの」というリアクションしかよこさない。正直つまらない。私だけ驚いたのが…。「びしょぬれ」の部分を喋っても綺麗に「大丈夫かしら…」と、驚くというより、その女の子マスターを心配している。頭をだろうか。その行く末をだろうか。

「でも彼女は研究の為に働いてもらうという契約にそぐう、優秀な才能を見せて、あのミクトランをマスターって認めさせた…みたいね、あのミクトランを、ねえ…」
『どういう手段を使ったのかしら…なんだ、結構出来る人みたいで安心したわ』
「うん、それに父さんの研究もはかどるから良かった、…って私の部屋使わせてんのね、…住み込みなのね…まぁいい子だといいけど」

しかし、あのミクトランを従わせたという事は、海でびしょぬれになってた、とかいう話で想像したたよりはるかに能があるというのか、…それか癖のある奇才ってだけ?
なんにせよ、働かせてるって事は賃金が出る。…うちの家計は大丈夫だろうか。

「あ、追伸もあるわ…えっと食費、光熱費などは国のクエストをしてもらって自活してもらっているので、うちの家計は安心してね…って」
『クリスの案ね…』
「そういうのにも従ってるなら、結構いい子っぽいわねえ」

早く顔が見てみたい、と思ったが。私も私で金になる依頼をこなしている最中だ。
ここだ、と決めた金額に達するまで、貯めてから帰らないと、遠出した意味がない。

「あー面白そうだし、早くみたいーかえりたいー」
『フフ、そうね、明日はもっと頑張って早く帰りましょう』
「そうねー…ちゃんと貯めこまないとね」

固いベッドに横になると、アトワイトの方を向いた。
コアクリスタルが光って、まるで笑っているように見えた。

☆装備
「お姉さん、ついでにこの装備なんていいよ、防御力抜群だよ」
「あ、結構です、まだまだ見習いなんで、そういうのは気にしてないので」
「え?見習い?またまた冗談をー…その剣みたら分かるよー熟練さんだって」
「ははは、では」

雑貨屋で、食材と、普段に着れるもの、それに簡単な装備を買った後、店の主人に、ちょっと待ってと呼び止められたら。屈強そうな装備を持ってこられ…まぁこの様である。
私も割とお人好しなのか、こうやってわざわざ持ってこられては、少しぐらいは立ち止まってあげないとなあ、なんて愛想笑いをしながら思ってしまう。
でも立ち去る勇気は持っているので、安心である。主人の顔を見ず、足早に。
…この店を使うのは、今度からは憂鬱になるだろう。他に安くていい店、探そうか、と悩み始めた時。

『まだまだ見習い、か』
「ミクも見てきたでしょう?まだ私、配達系クエしかやってねーから」

ミクが馬鹿にしたように、クククと笑い出した。

「まぁでも、そんな馬鹿な奴がお前のマスターだからな、ミクよ」
『…なッ…!!』

返す言葉も見つからないようだ。これが、事実!

☆絶対
王に謁見しろ、とリオン君からずっと言われている。

「嫌です、まだ彼からなーんにも情報を聞かせて頂けないのに、そんなお偉いさんに…」
「…いや、そういう過度な期待をかける訳じゃない、ただ…」
「じゃあ私が逃げないように~とでも思っているんですか?」

冗談で言った言葉に、驚いたように肩を震わせたリオン君。あ…もしかして図星か。
リオン君は気を遣ってたのに、…自分から、火の中に飛び込む馬鹿みたい。

「あはは…そりゃそうですよね、そういう物だ、今私が持ってるのは、うん、気にしないでリオン君、当然だし」
「だが」
「うーん、そうだな…じゃあ私の似顔絵でも書きます?」
「… ナマエ」

全然、気にしてない。本当に。だって当然じゃないか。こんな文化財レベルの国宝?盗んで逃げるとかしたら、凄いお金になるかもしれないしね。
でもそういうのに気付いた癖に絶対に謁見はしたくない。何も出来てないもんな。(ミクの野郎)
それなのに悪戯に注目だけされたら、辛いんじゃないか、私。

「すまない」
「え、やだ、リオン君やさしいー、惚れちゃうー」
「…ふざけるな」
「ふざける」

…謁見は暫くは、お預けになった。暫くは。
その代わり、絶対逃げるな。逃げたら、僕が地の果てまで追う。と言われた。
あれ?プロポーズ?って言ったら殴られた。

**

☆スタン、密航、飛行竜にて
クエストをこなすように言われてから暫く経った頃だ。
出張から帰ってきたヒューゴさんは発掘した新しいソーディアンがこちらへ届くんだ、と言った。

「へえ、また新しいのが出たんですね」
「新商品が出たみたいに言うな、…父さん、そのソーディアンは、もしかして…」
「あぁ!ディムロスだよ!最後の一本をアトワイト達から聞いてやっと掘り当てたんだ」

見るからにウキウキしている。…男はロマンに生きるってこういう事なのだろうか。
しかし、疑問が浮かぶ。

「今ここらへんにあるのって、ミクとお姉様のアトワイト、シャルじゃないですか」
「あぁ、どうしたのかな?」
「他にもあるんじゃないですか?後は…イクティノス、クレメンテってソーディアン」
「勉強したんだね、えらいなぁ…えっとね、イクティノスは代々ファンダリアの王家に伝わっていてね、今はイザーク王がマスターなんだ。…クレメンテは特殊な所に安置されていたのを見つけて、その後はアタモニ神団のマスターの資格がある女の子に調査してもらっているよ」
「ぺ、ぺぇ…」
「理解できたのか?…まぁ無理するな」
「あ、あ、うん」

とりあえず最後なのね、ディムロスってのは。
リオン君が残念な目で見てきているが、もういいんだ。慣れた。
そんな中家の玄関の方が騒がしくなる。私達が顔を見合わせると。
ついには、家のドアを激しく叩く音。私は身を抱きしめた。

「も、もしかして借金の取立て!?」
「いやそんな借金はしてないよ!多分ソーディアンが着いたんじゃないかな?」
「ひゅ、ヒューゴさーん!武装!武装!」
「うるさい黙れ!」

ヒューゴさんは私を無視して、子供のように、嬉しそうなダッシュで玄関に向かった。
私も行こうとしたが、リオン君に静止された。お前が行くと面倒な事になるから黙ってろ、とのことです。しゅん。

「…ヒューゴさん!ソーディアン、密航者に奪われちゃいましたぁぁぁ!!!すいまぜええええん!!」
「な、なんだってーーーーー!?」

……。

「私が行かなくたって、面倒な事になったじゃないですか」
「…そうだな」