恋愛初心者でも分かるヤバみ

同じクラスの碓氷はモテる男だがクールなのかぞんざいなのか、まったく女子のアタックに取り合わない。
顔しか良いところが無いのではないか?大丈夫か?私は冷静に一歩引く。だって全然喋んないし、愛想もないし。なんか眠そうだし。スラムダ◯クの流川か。
そんな中、碓氷が劇団に入ったと噂好きな友達に連れられ、彼を見に行くことになった。なんでも今日、ストリートACTをやるのだとか。何故知っている、と聞けば同じ学校の先輩が同じ劇団に入ってるからその人経由で、らしい。

「あっ、あれだよ真澄君だ!!!きゃーカッコいい!!」

なんと、流川のごとく、碓氷は碓氷で演劇が得意だった。取り巻きの女の子の間間に挟む黄色い声を意に介さず、誠実そうな男の演技をする碓氷。一緒にいる、明るい髪の男子は辿々しいながらも楽しそうに演技している。ちょっと年上そうな女性も一緒になって楽しそう。なんだかいい所に碓氷が収まったように見える。
演技が終わり、新生春組の公演をよろしくお願いしますと、3人でチラシを配りはじめた。

「碓氷、上手いじゃん演技」
「…どうも」

素直に褒めると、私をちらりと一瞥し、適当にチラシをはけていく。そもそも同じクラスだって事を分かってるのだろうか。チラシを見つめると、どこにでもありそうなクオリティ。ほお。そんな中、黄色くない悲鳴がとんだ。

「監督…。今日も、上手くできた?」
「うん!真澄君かっこよかったよ!」
「……アンタには聞いてない。どうだった?…監督」
「あはは…、咲也君どんまい…。…うん、すごかったよ。これからも期待してるよ、真澄君」
「…ッ!!はぁ…じゃあ、俺の事、好き?」
「いやいや、なんでそうなるの…?」

な、なに!?碓氷、あの人に惚れてる!?ひ、酷い…普段の女子の扱いの差と考えるに、これは酷い…。
一緒に演技してた…監督さんが困ってるように見えるが気のせいだろうか。

「何あの女!?カントク!?なんで真澄君、あんな態度違う訳!?あの女の言いなりにされてんのかなあ…!」

女の子は口々に負け惜しみを言いあう。でも分からないでもない、いつも女子のアプローチをスルーするくせに、この、一人の女性への甘々ぶりは、恋する彼女たちにとって、敗北にも等しい。

新しい男を見つけた方がいいよ。あれは忘れた方がいい。切実なアドバイスしか出来なかった。

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「なんで私が…」

それでも諦めきれない女子たち。私は隣のクラスの友達からラブレターを渡す係を仰せつかってしまった。一か八か、当たって砕けろという想いを感じる。しかし何故私が渡すのか。…碓氷になびかない貴重な女子だかららしい。

「おーい碓氷、これ、私ではなく、◯◯さんから」
「……はあ、自分で渡さないとか論外」

休み時間にて。眠そうな碓氷の目の前にラブレターと分かる見た目の便箋をさしだす。そしてため息をつかれた。

「そうかもしれないけど、辛辣だね。とりあえず受け取って欲しいけどそれも駄目?」
「アンタも見てただろ。…俺、監督しか興味ないから」

存在を認識されていたことに何故か感動しそうになった。絆されるクラスメイトとは私のことである。

「そうか。監督さん、元気で可愛い感じだったしねえ。それならまあ頑張れ」

バリバリの大人の女性って感じではない。どこにでもいそうな女の人だったけれど、ほんとうに元気で可愛い感じだった。
しかし、このラブレター、どうしよう。…受け取ってもらえなかったと素直に帰っていいものか。ひらひら便箋を振って帰ろうとした。

「アンタ……分かるクチか。……相談に乗って欲しい」
「は!?」
「監督以外の女子で、相談できるヤツが欲しかった」
「…何の相談でしょう」
「恋の相談」

盛大にむせた。あの、碓氷が。恋の、相談。息が変なとこに入った。私が落ち着くまで真顔で待ってる碓氷。

「マジか…うーん…。全然話したことの無い私でいいの、それ?」
「監督の魅力に気づいたアンタになら相談できる」
「誰でも良かった!!」
「違う、監督の魅力に気付く女子だけ。…後アンタ、俺に何も言ってこないのも良いし」
「そうか…」

よく分からないまま承諾し、休み時間に限り、彼の恋の相談役になった。…しかし、私、まったく恋愛したこと無いけど大丈夫なのかな?…碓氷曰く。

「俺もそんなだったし、そんなもんじゃないの」