「笑顔でいて」「前を向いて」って約束したから。ナマエは目を細めて空を眺めた。湊くんは私を見てくれている。湊くんらしい、清々しい青空となって私を、世界を微笑んで見守っているに決まっている。ナマエはそれを何回も確認するように繰り返す。笑顔で、前向きに生きているよ、と空の上の湊に語りかける。きっとそうしたら彼も微笑んでくれるから。
湊はナマエが悲しみと上手に付き合って、自分のことを顧みずに生きていくことを望んでいるんだろう。湊の遺志を理解しているからこそ、「頑張るぞお」と声をあげるも、どうしても震えてしまう。次第に喉がしゃくりをあげる。体の自由が効かないことに、ナマエは首を傾げた。気づかないふりをして、彼の望む自分でいることに全力を尽くしてきた。本心を隠していないと、罪悪感に耐えられなくなる。約束を守れない自分なんか湊に見せられない。
でも、本当は知ってる。彼はきれいな空から見守ってなんかいないこと。ニュクスを守るためにたった一人で鎖になっていること。ナマエは死を求める化け物となって今も湊を傷つけているのだろう。止まらない涙を止めようとする努力もできないまま、動かない湊を獣の大きな手で掴んで、有刺鉄線から引きちぎるところを夢想する。ニュクスが放たれた世界。湊が守った世界が闇に沈むのは悲しいけれど、ナマエは役目が終わった彼を抱きしめてあげるのだ。その時、湊はナマエを軽蔑しているかもしれない。それでも、ごめんね。貴方に会いたい。