放浪者のゆめ①

※放浪者とナヒーダと男夢主の超短編
※男夢主はトリップしてきた設定で空とパイモンと旅をしている

 ファデュイであったスカラマシュ(現在は放浪者と名乗っている)は、何故か(本人は不本意そうだけど)空の味方になっていた。俺は彼のことあんまり知らないけど、他人のこと嫌いなんだろうなあというのは、普段の彼の態度を見るに理解できる。無視と悪態をつくのが得意なようだから。
 なんでそんな感じなのか空に聞いてもいいけど、他人のプライバシーに踏み込むのは良くない。
 本人に聞くのはもっと無理だ。
 だから、あんまり関わらない方が良い…のだけど、ナヒーダが俺に放浪者への託けをよく頼んでくる。
まるで母親が子どもを目にかけるように、「あの子をよろしく頼むわ」と言わんばかり。
 ナヒーダは放浪者へ伝達をする度に邪険に扱われる俺の身になってほしい。彼はナヒーダにはある程度柔らかい態度なのだから、扱いの差を知らないんじゃないか!?

 スメールではナヒーダの側仕えになってしまったので、仕方なく彼を探しに街の周りを探しに行くことになる。彼は活気ある街の中にはいない。街の周辺にはいるのだが、すぐには見つからない。大樹の上に座っていた時もあった。勘弁してほしい。

「ナヒーダから花のプレゼントだって」
「ナヒーダが今日は早く帰って来いって」
「ナヒーダが世界樹について話があるから呼んでるよ」

 最初はなんでこいつが?と言わんばかりの目を向けられ、ワープポイントに飛んだのか、無言で目の前から消えるところをよく見ていたが、「草神の飼い犬みたいに、よくいいつけを聞くね」と苦言を呈されたことがあった。

「飼い犬って…。空がナヒーダの側仕えの仕事を紹介してくれたんだよ。そりゃいうことだってきくよ」
「…よくもまあ、嫌にならないね」

 俺が積極的に放浪者のことを探し回っていると勘違いされているようだ。言いたいことははっきり言っておかないと。

「…まあまあ嫌だよ。あちこち探し回ったのに礼もなく即消えられるしね」
「はっ、素直だな」

 鼻で笑われた。子供のすることだから!子供のすることだから!と怒りを抑えながら要望も伝える。

「だから、もうちょっと分かるようなところで佇んでほしいよ」
「僕がどこにいたって勝手だろ」

 つんとした態度を取られるも、こちらの命をかけた探索を省みてほしい。さすがに必死な声があがる。

「困るんだよ!町外れとかに居られると!俺が戦えないの知ってるだろ!」

 今まで運良く敵に会っていないだけで、敵と遭遇したら脱兎の如く逃げなくてはならない。

「一応身を守れるんじゃなかったの?」
「まあ一応はね…。でも戦う手段はないんだってば」
「あらら、そう」

 あららて…、あららて…と心の中で繰り返しながら、「とにかく!どっか行くなら書き置きを残すとか、分かりやすいところにいて!」
「……気が向いたらそうするよ」

 少しは譲歩してくれるかと思った。
 だが、俺の期待は裏切られる。その次の日は、史上最大の捜索になったのだった。かくれんぼじゃないんだよ、とひいひい言いながら、日が暮れた頃に廃屋に佇む放浪者を見つけた。

「よく見つけたね、…諦めると思ったのに」

 驚いた表情が印象的だった。だが、疲れ果てた俺はそんなことに気を留め、言及する余裕はなく。

「ナヒーダがカレーを作ったから食べてほしいそうですよ…」
「そう…草神の料理ね…」
「きっと凄いご加護があるんでしょうね…」
「さっきから敬語だぞ。気持ち悪い」
「歩き回って疲れ果ててんだよ!」

 この頃は、ただナヒーダが放浪者の人嫌いを克服させたいのだと思っていた。かくれんぼ状態はしばらく続き、俺はナヒーダからスメール周辺の地図を貰い、対策を練ることにした。それが功を奏したのか、比較的放浪者を見つけやすくはなった。
 そして、またあくる日。

「世界樹の調査が進んだわ」
「それは…良かったね」

 正直世界樹については、この世全ての知識が詰まってる?ことくらいしか知らないのだが、ナヒーダが喜んでいるのは良いことだ。

「よく手伝ってくれている放浪者を労いたいのよね」

 考えるように、ナヒーダの小さな指が自身の顎の下に添えられる。放浪者の名前が出たところから正直嫌な予感しかしない。

「あなた、放浪者の好きな食べ物は知っているかしら?」
「……知らないよ?」
「なら、彼に聞いてきてちょうだい。今日のお夕飯にしましょう」

 名案とばかり手をぱちんと合わせた彼女に、俺は乾いた笑みを浮かべていた。教えて…くれるかな!?

____

「また君か」
「見つけるの、早くなったろ」
「…ふん、要件は何だ」

 今回の放浪者は比較的人通りの少ない場所のベンチに腰掛けて、読書をしていた。表紙からして学術書のように見える。いつも不機嫌そうな顔をしているが、かなり眉間に皺が寄っていることから難解なものを読んでいるのかもしれない。もしくはナヒーダに押し付けられたとか、…などと想像しながら、自分も放浪者の横に座り、ふうと一息つく。

「好きな食べ物はなにかナヒーダが聞いてこいって」
「それを聞いてどうするんだ」
「世界樹の調査が進んでるからって、ナヒーダが放浪者を労いたいみたいで」
「そうか…」

 それを聞いた放浪者はため息をついた。

「何でため息つくんだよ」
「僕は…仕方なくナヒーダの協力者になっただけで、馴れ合いたいわけじゃない」

 好物を聞き出すのさえ難しそうな雰囲気となった。ナヒーダとも一定の距離を取りたいようだ。ある程度打ち解けているように見えたが、それは彼女の努力によるものなのだ、と改めて思い知る。

「好きな物食べれるだけって割り切ればいいだろ、馴れ合いとかじゃないと、思うけど…」
「そもそもナヒーダの、僕とお前の接点を増やしたいっていう魂胆に腹が立つ」
「…俺だって苦労してるよ」

 このままでは話は平行線のまま。お互いに会話するのがめんどくさい…とまで思っていそう。少なくても俺はそうなりかけている。
 どうしたら好物を聞き出せるのだろうか。

「草神には、僕が話さなかったと言えばいい」
「嫌だ。このまま引き下がってナヒーダからの仕事が失敗するのが嫌だ、なんか、……プライド的に。好物くらいすぐ話してくれると思ってたのにさ」
「お前って、ほんと……僕のことを甘く見てるよね」
「放浪者はナヒーダをしょんぼり顔にさせてもいいのか!?」
「……知ったことか」

 七聖召喚のように切り札「ナヒーダ」を召喚しても何も吐きやしない。頑なな奴…!揺さぶりをかけたのに表情は変わらない。
 だが、ずっと本を見つめているが、ページをめくる手は進んでいない。
 改めて息を吐くと、真剣に向かい合う。

「俺は君やナヒーダ、空やパイモンの料理係も兼任してる。仲間の好物、苦手な食べ物は知っておくべきだ」

 放浪者は一瞬本から視線を外し、こちらを見たが、すぐ視線を戻す。

「……苦手なものはあまったるい菓子、特に団子みたいな粘っこいやつ」

 違う、そうじゃない!でもまあ苦手な食べ物を知りたいと言ったからには間違いない。
 もしかして、最初に断ったから好物を言う訳にはいかないと退くに退けない状況になったのかも?

「もうナヒーダに放浪者の心の声聞いてもらおうかな…」

 俺も根負けし、いいだしっぺのナヒーダに頼ろうかと呟くと、「苦い味」と小さな声が隣から聞こえた。聞き間違えていないか。

「苦いのが好きなの?」
「二度は言わない。あとナヒーダを使おうと考えるな」
「分かったありがとう!早速戻ってメニュー考えてみるね!!じゃ!!」

 早速聖処へ戻ってナヒーダに報告、そしてメニューを考えよう。善は急げ、ベンチから立ち上がるとサラスタンナ聖処近くのワープポイントに飛んだのだった。

残された放浪者はとてもとても深いため息をついたのだった。