雪山がとけるほど恋したい

 雪山を踏破したナマエはパイモンとウェンティと共に山を降っていた。

「ウェンティありがとうね、やっぱり探索する時頼りになるよ」
「え~っ、探索だけかい?いつも頼りにしていいんだよ?ほら、戦闘とか何の変哲もないお出かけだって」

 吹雪が吹く中、震えながら雪を踏みしめる。ピクニックでもしたいねえとウェンティが言うからナマエは青空のポカポカ陽気のもと、ごろりと草原に横たわる想像をした。だが、強く吹き込んだ風がそんな望みをも飛ばしていく。

「吟遊野郎は他にも…飲み比べの時、役に立つかもな!」
「えへへ、否定はしないよ」

 パイモンの言葉にドヤ顔をするウェンティ。ウェンティは見た目にそぐわず大酒飲みである。

「早くモンドに戻ってタンポポ酒が飲みたいなあ~」
「そうかあ、…よし。いっぱい助けてもらったし、ちょっと奢らせてよ」
「本当かい?ありがと~!ナマエ!」
「わあ」

 ウェンティにぎゅうと抱きしめられる。冷たい同士ひっつくも、触れ合った場所から徐々に温度が生じていく。それを見たパイモンが腰に手をやる。

「オイラ知ってるぞ、それ、セクハラってやつだ!」
「いいじゃないか。喜びも表現できるし、暖も取れて一石二鳥」
「まあ、ウェンティなら別にいいけども」

 なおもウェンティがくっついたまま、ナマエは顎に指を添えた。気心知れたウェンティなら別に構わない。だが、もっと背が高くて、よく分からないような男性だったら。例えば…。

「やあ、ナマエ」
「お前はファデュイの『公子』!」

 想像していた人物が現れ、ナマエは目を瞬かせた。「ファデュイの公子」タルタリヤ。璃月の騒動から何度か戦っているが、相変わらず何を考えているのか読めない。…なおもウェンティはナマエにくっついたままだ。ただ、ウェンティは怪訝そうに眼を細めてタルタリヤを見つめている。
 そういえば、ドラゴンスパインの道中、ファデュイの面子が立ち塞がることもあった。ファデュイはまた、何か狙っているのか。この地に価値のあるものでもあるのか。

「今日連れてるのはバルバトスか…。まあいいや、下山の途中かい?ご一緒しても?」
「こ・と・わ・る!ファデュイと仲良く帰るなんて出来るかっ!」
「おお、おちびちゃんはご機嫌斜めだね。寒さのせいかな?」
「ボクもご遠慮願うよ。ファデュイってば、ボクらのこの様子を見ても邪魔したいと思うの?」

 頬を膨らませるウェンティ。なおも彼はナマエに抱き付いたままである。
 タルタリヤはナマエを見ると、「恋人って様子じゃなさそうだけど」とからから笑い出した。

「今はね。これからそうなるかもよ?」

 ウェンティがぎゅうとナマエを抱きしめる力を強くした。これにはナマエも胸を鳴らす。意識しそうになるではないか。

「神様って恋愛をするのかい?初耳だ」
「お前ら、ウェンティの神の心を奪っておいてぇ~!」

 肩をすくめたタルタリヤに、ウェンティは静かに笑った。それを見てタルタリヤは、眉間にしわを寄せる。余裕の笑みだったからである。

「いいんだ。これからは風の導くまま、ウェンティとして生きるってことさ。…それにぃ」

 ウェンティはナマエを開放すると、向き合うように彼女の肩に手を置いた。

「ボクの、…ウェンティの心を奪ったのはナマエだからね!」
「お、おう…」

 極寒の中、なんか言われた――。それでも、頬が熱くなるナマエ。雪山がとけるほどの恋が始まってしまう――!?パイモンが慌てふためき始めた。

「…なんだか、関わるのが面倒くさくなってきた」

 自分、邪魔者すぎ?そう感じたのか、つまらなそうに去っていこうとするタルタリヤ。その背中がしょぼしょぼしているように見えて、ナマエは思わず、「また勝負しようね…」と声をかけてしまった。その声に振り返るタルタリヤ。

「…そうだね、俺たちはそれで解り合えればいい」
「ハイハイ、また勝負しようねーお兄さん!バイバーイ!」
「……」

 みんなに手を振られ、タルタリヤは先に山道を下っていった。

「告白もしちゃったし、酒場じゃなくて、やっぱり二人きりでピクニックがいいかもね」

 たんぽぽが揺れる丘でサンドウィッチでもどう?と誘われるも「オイラは!?」という悲痛な相棒の叫びにより、下山して休んだのち、3人でデートをしたという。