顕現したての子にとって『食事』とは、初めてだらけの体験の中で特に強烈だと思っている。味がする事すら驚きの対象の彼ら。いろんなものを食べていく中で、自分の味の好み、苦手なものを知っていく。
「審神者殿!この煮物、とても美味しゅうございます!!特にこのお揚げ!!美味です!!」
まさか狐さんがこんな事言ってくれるとはなあ、思わず笑ってしまった。
「狐さんさ、人の食べ物食べて大丈夫なの?動物用の食べ物…?みたいなものじゃなくていいのかなって思って」
鯰尾君の言葉に、激しく頷く狐さん。
「えぇ、えぇ!!大丈夫ですとも!!」
「ただの狐じゃないから」
「ふうん、…一応おかわりはあるからね。腹減ってたら食べといて」
「みんな、ご飯美味しいよー。私、おかわりしちゃうよ」
「マジ!?嬉しい…俺よそってくる!」
鳴狐君一行が加わった食卓は(おもに狐さん)さらに賑やかしい。でも、思ったより他のみんなは落ち着いているし、いつもの食事みたい。
空になったお味噌汁の入っていたお碗を掲げれば、隣の加州君が顔を赤くながらお味噌汁をよそいにいってくれた。微笑みながら、彼の背を目で追った。
大きなちゃぶ台には、炊き立ての白米にネギ入り卵焼き、お味噌汁にはよく煮えたじゃがいもと玉ねぎが入っている。狐さんが言うように、お揚げと大根の煮物はほくほくとして美味しい。普段から、戦に行かない日はみんなに料理を手伝ってもらっているので、さすがの出来栄え!
「なんだか、美味しいって言ってくれるのっていいね」
安定君の小さなつぶやきに「そうだよね!!」と大いに同意した。びっくりしたように目を見開かれてしまったけど、構わず言葉をつづけた。
「私も、みんなが「これ、美味しい」って言ってくれるの嬉しい、家事も手伝ってくれるし。だから毎日ご飯が作れるんだよねえ」
安定君に素直な言葉を伝えると、そのうち、困ったように俯かれてしまった。…熱く言い過ぎたかな…。
「え、えーと…。ごめん、なんか変なこと言っちゃったかも」
「あっ…、…そんな事は、ない、よ」
胸に手をやる安定君を見た後、肩を落とした。そんな事ありそう!やってしまったかと天を仰ぎ見たくなる。
「主、大丈夫ですよ。安定さん、きっと照れてるんですよ」
「あはは…ありがとう」
鯰尾君がすかさず雰囲気を取りなしてくれる。やっぱり作り笑いがへたくそなので、苦笑いになっているであろう、私よ。
「主の言っている事、変じゃないよ」
小夜君が箸を置いて、しゃべった。彼の声は小さい方だと思うが、やけに耳に届くのだ。皆が彼に注目する。それから、小夜君はご飯を食べ終えたようで、小さな手を合わせてから、こちらに顔を向けた。
「主の言葉を聞くの、好きだよ」
「小夜君…」
「絶対に変なんかじゃないから」
素直な言葉だ。顔と目が熱くなる。お礼の言葉を反射的に返していた。
「お礼を言われることじゃないよ」とぽそぽそつぶやいて、彼は自分の食器を手に、台所へ去っていった。
「小夜ってば良いこと言うじゃん」
代わるように加州君がお味噌汁を手に戻ってきた。「はい、どおぞ」と丁寧にお椀を私の前に置いてくれた。
「あ…!ありがとう、加州君」
「いいのいいの。それより主、後で二人で話がしたいんだけど、いい?」
「ん?大丈夫だよ」
加州君どうしたんだろ?何か報告でもあるのかな。
それにしても、安定君、疲れているのかな。…それか、私のテンション…、いや、私の事が苦手なのかもしれない。うん、マイナス思考。
でも、最初の頃の安定君にそういう反応が無かっただけに、そういうのに気付いてきたのかもしれない。誰だって自分の好き嫌いとか、あるよね。
…でも、フォローしてくれる子がいて良かった。みんな、ありがとう。
気を取り直してお味噌汁に箸を伸ばす。