みんな(ペットも含む)でテーブルを囲って夕ご飯を食べている最中に、こんのすけから夜の戦場に出動せよとのお達しが来た。はあ~?夜戦?なんだか意味深だが、言葉のまま、夜の戦場なので安心してほしい。
「誰に向かってのプロローグなんですか?」
「心を読まれた…!?」
堀川の言葉に、大袈裟に仰反った。刀剣男士、さすが、付喪神のことだけある。…やっぱり心読めるんじゃねえか!
「……夜戦には短刀を向かわせることを推奨します」
私たちのくだらないやりとりが終わった後、再度しゃべり始めるこんのすけ。その中のとあるワードに思いきり顔をしかめてしまった。
「今、短刀って言った?」
「ええ、短刀とお伝えしましたが」
「うちの本丸にはいないけど、別にいい?」
「ならば、短刀を鍛刀して下さい」
「なんか、ダジャレっぽくなったね」
「……」
こんのすけはそのまま帰ろうとするので、「待て待て待て」と自分でも驚きの瞬発力で進路を塞いだ。
「夜戦ごとやめる選択肢はないの?」
「ありません。貴方様の本丸の出陣回数が少ないことを鑑みての指示なのですが」
相変わらず食事以外は辛辣!何も言い返せない私。
加州は「まあまあ、いいじゃん。夜戦のために一回鍛刀やってみたら?」とかなり呑気。長谷部も「俺が鍛刀の補佐をいたします」と乗っかってきた。「あ、長谷部ずるっ!俺もやる!」長谷部に抗議する加州。君たち、私に同調してくれないか?
その間に「みなさん、審神者様をよろしくお願いいたします」こんのすけは刀剣という保護者に私を任せて去ろうとしたところ、光忠が「お揚げ入ってるからちょっとお味噌汁食べていくかい?」と格好良く提案。「なんと!是非とも頂きます!」と尻尾をふりふりさせ何度も頷くこんのすけ。お供の狐も「お出汁が染みて美味しいですよ」とにっこりしている。その言葉を聞き、光忠もこんのすけもにっこり。「楽しみです?!」と台所へ向かう光忠と上機嫌なこんのすけ。
ニャーちゃん、ワンちゃんは皿の上のご飯を食べ終わり、長谷部におかわりをねだっていた。「仕方ないな」と長谷部は自身のそばに置いていたキャットフード、ドッグフードの袋の封を開き始める。
私は立ち上がったまま、その様子を困惑しながら眺めていた。審神者、無視。
「どうして鍛刀するのがやなんです?また量産するかもしれないからですか?」
箸置きに箸を置く堀川。真面目に話し合う雰囲気になってきたので、慌てて「いや、違うってば?」とおちゃらけに答えて、元いた席に戻る。サバの塩焼きをむしり、口に放りながら「あー光忠のご飯おいしおいし」と言うも、正直、あまり味が分からなくなっていた。
「もしかしたら俺たちの兄弟が来るかもじゃないですか。短刀を鍛刀して下さいよお」
やはりダジャレっぽいな、と頭で呟きながら、夕飯を食べ続ける私。
「鳴狐さんからも言ってやってくださいよ」
「…お願い」
「鳴狐もこう言っておりますし、主殿、お願いいたします!」
鳴狐たちからのお願い。その健気さに、ついつい「ぐぅっ」と声を詰まらせてしまう。
「そんなに僕たちを戦に出すのが嫌なの?今までは警告されたら渋々出陣させてたのに」
安定から指摘を受け、「ぐううっ」とさらに声を詰まらせた。
「何か訳があるなら仰って下さい。この長谷部が何でも解決してみせましょう」
おかわりを食べさせたのか、膝の上にニャーちゃん、そばにはワンちゃんを侍らせ、ドヤ顔をしている長谷部。悪いが、そう易々と解決できる問題じゃない。「やっぱりずるい」と加州が口を尖らせているのを聞き流しながら、うーんと唸る。渋る理由だけでも伝えておくべきか。
「…短刀を迎えるのがちょっとやなんだよね」
「何でですか?」
鯰尾の表情が悲しげに歪む。ごめんよー!と心中で謝りながら、言葉を続けた。
「マニュアルで見たんだけど、短刀って、子どもの姿なんでしょ?…子どもとどう接すればいいのか分からなくて…」
ここにいる一同が、一斉に「は?」と言わんばかりに眉間に皺を寄せた。
「そんな理由でですか!?」
「そうだよ!それに小さい子を戦わせるのかわいそうでしょ!?」
「真っ当な理由もあった!」
失礼な。審神者はいつも真っ当である。
「刀といえども、無邪気な子どもの姿の子らを戦わせるのは…気が進まないよね」
刀剣男士のことを、どうしても戦うための道具とは思えない。
「こんのすけ君、もう帰ったよ…ってどうしたの?夜戦のことで揉めているのかい?」
光忠が居間へ戻ってきたが、あまりに静かな一同に驚いているようだ。まんばちゃんが光忠に沈黙の原因を伝えてくれる。光忠もみるみる内に難しい顔をして、顎に手をやった。
少しして、長谷部が猫と犬を侍らせたまま挙手をした。「はい、長谷部、どうした」と指名する。
「主、俺に案があります。顕現するのに最適な短刀に心当たりが」
「子どもを戦わせるのは難しいって言ったじゃん」
「…姿は子どもでも、態度が子どもらしからぬ、肝の据わった短刀です」
「要するに…大人顔負けな短刀ってこと?」
「えぇ、流石は俺の主。理解が早くて助かります」
「ちょっとお、何なのそのアピール」
加州が頬を膨らませている。ちょうど右隣にいるので、「はいはい」となだめるように頭を撫でておく。力が抜け、落ち着いた加州を、今度は長谷部が睨みつけている。唐突な昼ドラ感。
「じゃあ、その子を鍛刀できればいいけども…確実に迎える手段はないじゃない?それに、カネサンすら鍛刀できないのにそんな狙い撃ちって…」
最後の方は小声になってきている。
「そいつに由縁のある触媒を用意しましょう。そうすれば確実に「薬研藤四郎」を鍛刀できます」
「おおっ、薬研殿でしたか!」
お供の狐が歓喜の声をあげる。鯰尾もぴょこぴょこアホ毛を揺らし、鳴狐たちに同調した。
「ね、やっぱり!うちの兄弟じゃないですか!応援してます主!」
藤四郎つながりで鯰尾、そして、鳴狐の兄弟のようだ。鍛刀する前提になってしまった。
しかし、薬研藤四郎君由縁の触媒を用意するとは…。本当にガチャらしくなってきたな。
「…はあ、仕方ない。やったるか~…。それにしても触媒って何を用意したらいいの…?」
「えぇ、この場合、織田家つながりで俺が近侍として鍛刀をお手伝いすれば問題ありません」
「それ触媒っていう?」
「やっぱり主の補佐目当てじゃんか」
「ふん、言っていろ」
「それ触媒っていうの、ねえ?」
私のツッコミは無視されるのだった。
「僕が近侍の時に鍛刀したら兄弟が来たから、関係あるかもしれませんね」
「だろう?」
ドヤ顔の長谷部に腹が立ってきた。そうなのか、とまんばちゃんが頷いている。
夕食の片付けが終わって、早速鍛刀をしましょう、という流れになり、長谷部に鍛刀場に連れていかれる私。ニャーちゃん、ワンちゃん、鯰尾、鳴狐も長谷部についていく。大人数すぎる。
「で、このまま鍛刀したら、薬研藤四郎君は来ること確定なんだね…?」
「ええ、主の仰る通りです。はい、おそらく…」
「弱気になってきたな…!」
長谷部の目が泳いでいく。さっきは思いついたノリで発言したんだな?そうに違いない。
「俺たち、兄弟もいるから大丈夫ですよ!ね、鳴狐さん!」
「えぇ、えぇ、大丈夫ですとも。安心なされてください、主様!」
鳴狐もこくんと頷いてくれた。そう言ってもらえると心強い。
相変わらず隅に黒塊が積み上げられているが、気にせず、無欲に、鍛刀してみよう。
燃えたぎる窯にカネサンより少なめの資源を投入。息を呑むも、黒い煙が出ないことを確認し、やっと安心。ほっと一息。浮かび上がる時間も、短刀のもの。二十分もの時間、どうしようかと腕組みしていると、白い煙がふきだしたのに、「は?」と気の抜けた声を上げてしまった。
「あ、札入れちゃいました」
「な、何だってー!?」
鯰尾が手伝い札を入れたようだ。鳴狐はそれを黙認し、長谷部は気付かなかったのか、わなわな震えている。この自由奔放さにデジャヴを感じてしまった。こんのすけの制止を振り切った初日の私かな?
そうこうしている内に、煙の中から見目麗しい少年が現れた。短パンだ。どう見てもおとなしそうだが、この美少年のどこが大人顔負けというのだ、私は長谷部を咎める為に声をあげようとした。
「薬研~久しぶり~!」
「おう、鯰尾の兄貴、久しぶりだな、鳴狐の兄貴も」
「お久しゅうございます!薬研殿!」
「会えて、嬉しい」
彼こそ、薬研君だった。声低っ!言葉遣いも格好いい!だが、長谷部がドヤ顔をしているのには、やはり腹が立ってくる。
「長谷部も……っと、なんだこいつら」
薬研君の足にすりすりする猫犬二匹。薬研君はしゃがんで、二匹の頭を撫でる。動物と触れ合う薬研君、可愛い…。
「お前を歓迎しているんだろう」
生き物係長谷部は全てを分かっている。
ひとまず、薬研君に夜戦の為に鍛刀したことを伝える。黙って、相槌を打ちながら話を聞いてくれる薬研君だったが、鯰尾が余計な口をはさむ。
「主ってば、子どもとの接し方が分からないから短刀を迎えてなかったんだって」
「鯰尾、おだまり!子どもを戦わせたくないって、ちゃんとした理由もあったんだから。…薬研君、鍛えておいてなんだが、戦は怖くない?嫌だったらやめとこうと思ってるんだけども」
「大将、その必要はねえ」
薬研君は私の言葉にからから笑うと口端を上げた。
「短刀でも刀は刀。戦うための刃は磨き上げているからな」
か…格好いい…。おもわず両手を口に当てる、乙女しぐさをしてしまった。長谷部が「薬研は子どもですよ?」と確認される。薬研君…いや、薬研さんの存在を私に紹介した時と発言が矛盾しているような気がしたが、気のせいか?「わ、分かってるってば」と赤くなった頬を手であおぐ。
「でも、無茶しないでね。出陣は明日でも…」
「いや、他の刀剣がいけるってんなら、今日でも構わんよ」
「ええっ!?」
みんなに薬研さんを紹介してから、今日の夜に出陣してもいいか聞くと、二つ返事で了承されてしまった。寧ろやっと出陣かといった声もあり、そうか…と私だけが肩を落としていた。
加州、鯰尾、鳴狐、堀川、安定、薬研さんを部隊に編成し池田屋の戦いに出陣させることにした。特に薬研さんには、ごてごてに兵装、お守りを携えさせている。みんなには軽傷でも帰ってくるんだよ、と伝えており、今までもそれを守ってくれていたから、今回も危なくなったら、きっとすぐ戻ってくるだろう。
それに、池田屋ときたら、「新撰組」だ。元の主…土方歳三や沖田総司の刀だった子らは出陣することを自ら名乗り出てくれた。辛くない?大丈夫か、と聞くも、「大丈夫だって、心配しないで」「土地勘のある刀がいた方が安心でしょう?」「僕らより、薬研に気をかけたら?」と思い思いに返答をされる。不安を微塵も感じさせない三人に、かえってこちらが勇気づけられてしまった。
いつものように、出陣する面子を玄関まで送りだすと、「いってきま~す」と軽やかに返事をするみんなに「いってらっしゃい」をおくった。がらがらと開けた扉の向こうは暗い。
出陣したみんなは、夜寝る時間になっても、帰ってこず。
いつもお昼の後に出陣して、夕方に帰ってくるから、夜戦の時の帰る時間は夜明けか、はたまた早朝なのかもかなあ、と一人居間でため息をつく。気が進まないが、みんな自分の部屋に戻っていったし私も寝ようかな。玄関の電気をつけて、自分の部屋に戻ることにした。
ちらかった部屋で、寝間着に着替えると、敷きっぱなしの布団に寝転がる。何分経ったか分からないが、いつものように、すぐ寝付けず、寝返りを何度もうつ。
薬研さん、初出陣が夜戦って、大丈夫かな。鯰尾や鳴狐がサポートしてくれるだろうけど、うまく戦えているだろうか。加州や堀川、安定も、過去に囚われるな、とは言えないが、いつものように戦えていたらいい。
ああ、もしも、誰か怪我をして帰ってきたらどうしよう。審神者がいなくても、手伝い札を使えば手入れは出来るが、苦しい時に迎えてくれる人がいなかったら寂しくないだろうか。自分の過去の出来事が頭をよぎる。傍にいてくれる人がいた思い出。一人で閉じこもっていた思い出。
考えても、行動しなければ何も変わらない。ここに来てからを振り返る。行動して、何かが変わった。こんな私でも審神者になったし、話を聞くことが出来た。空回りしたけど、様子を気にかけることも出来た。
玄関に近い居間でみんなを待っていよう、と思った。枕と掛布団を持ち、みんなを起こさないようにそろそろと自室を出て、居間へ。明かりをつけた後は、喉も乾いたし、台所からお茶を汲んでくることにした。
のれんをくぐってから電気をつける。冷蔵庫から麦茶を取り出して、コップに注ぐ。よっぽど喉が渇いていたのか、一気飲みしてしまった。コップを流しに置いて居間に戻ろうとした際、シンクに置いた業務用炊飯器の釜に目が留まる。みんなが帰ってきたとき、軽く食べるものがあったらいいかな。戦って、お腹が空いているだろう。炊飯器を早炊きにして、おにぎりでも作ろうか。
お米を研いでいると「主?」と着流し姿の光忠がやってきた。
「ごめん、起こしちゃった?」
「ううん。それより、今からお米を炊くのかい?帰ってくる子らにおにぎりでも作るの?」
「ありゃ、お見通しか。…うん、そうそう」
「手伝うよ、六人分でも大変でしょう」との優しい申し出に、素直に甘えることにした。そこに、入口にもたれかかるように長谷部が現れた。こちらも着流し姿。助っ人が現れるような登場シーンである。
「主、燭台切だけに頼るなんて水臭いですよ」
セリフもそれらしい。我が本丸の少年漫画で学習したのだろうか。
「格好いい登場の仕方じゃないか、長谷部君」
「ね、長谷部もおにぎり作り手伝ってくれるの?ありがと」
「ッ身に余る光栄です…!」
光栄に打ち震えている?長谷部と、釜を持った光忠を伴い、ご飯が炊けるまで居間で待っていようと移動する。居間には布…いや、まんばちゃんが座っていた。……びっくりして仰け反ってしまった。まんばちゃんも、私たちの登場に目を見開いている。
「あんただけじゃなく、燭台切も長谷部も起きていたのか」
「まあね~まんばちゃんも気になって起きてきた口ですか?」
「ま、まあな」
にやつく審神者。赤面したのか、布を被り直すまんばちゃん。まんばちゃんはいつもの布プラス、Tシャツとジャージ姿。人それぞれだなあ。
「あ、そうだ。まんばちゃんもおにぎり作り、手伝ってくれる?」
まんばちゃんは「おにぎり?」と口に出すも、すぐに意図を理解したのか納得した顔で頷いてくれた。
みんなも起きてきたことに安心しているのを自覚した。業務用炊飯器にお米の入った釜をセットし早炊き設定にすると、「お願いしまーす」と声をかけておく。待っている間にトランプでもするか!といつもの調子で声をあげ、四人で白熱した大富豪を繰り広げる。その間にご飯が炊ける音がした。
台所からおにぎりの具、お皿を持ってきた後、居間でおにぎりを作り始める。炊きたてであちあち、と声に出しながらも、鮭フレークやら、卵ふりかけをまぜたもの、明太子やチーズおかかを中に入れたものなど、思い思いのおにぎりを握っていく。丸型、俵型や三角おにぎりにして、のりを巻いて、完成。出来上がったおにぎりは大皿に入れてラップをしておく。
日が差し始めたころ、遠慮がちに玄関の戸を開く音がして、真っ先に走っていた。
「おかえり!」
玄関に駆けつけた時、みんな目立った怪我がないのに息をついた。何故審神者が、寝てるかと思った、といった具合にみんな目を丸くさせている中、薬研さんがにかっと歯を見せて笑った。
「大将、待っていてくれたのか。ありがとうな」
「いえいえ!薬研さんも、みんなもお腹空いてない?残ったメンバーでおにぎり作って置いてあるから、食べちゃっていいよ」
「まじですか!ぜひとも!」
「俺、主の握ったの食べる~」
ばたばた、ひとまず洗面所へかけていくみんな。手洗いは大事。一人、残ったのは薬研さんだった。どうしたのだろう。
「おにぎり…」
そうか、薬研さんは人の身になって初めての食事だ。お腹が空いている、の概念も分かっているのだろうか。
「みんなと一緒に手を洗いに行きましょう。…そんでもって試しに一口食べてみよう?薬研さんの好みの具はなにかなあ~ってみんなで握ったんだよ」
「あぁ…」
戸惑っている薬研さんの背を押し、洗面所へ。学校のごとく広い手洗い場で、手袋をとって手を洗ってもらうと、居間へと案内する。
みんな薬研さんが来るのを待っていた。席に座ってもらうと、私も彼の隣へ。いただきます、と手を合わせて大皿へランダムに盛り付けしたおにぎりに手を伸ばす出陣メンバー。見よう見まねでいただきますをした後、薬研さんはふりかけおにぎりに手を伸ばした。あんまり迷わないで決めるのね。後、それ、私が握ったやつ。密かに、にやりと笑う審神者。
薬研さんは大きく口を開き、豪快におにぎりにかぶりついた。大胆ね。頬を膨らませてもごもごした後、ごくんと飲み込んだ。私に顔を向けると、ぱっと、明るく笑った。
「大将、ご飯ってうまいな!」
子どもらしい笑顔だ、と思った瞬間、胸が痛んだ。咄嗟に笑顔を作って頷いておいたが、出陣させるのをやめておこう…、と決めようとするも、タイミングよく言葉が降ってきた。
「主~、薬研ってば、俺らの中で一番活躍してたんですよ」
鯰尾の話で、やはり手練れだったことが伺えた。子どもながらも、夜戦ではプロ…か。でも、やっぱり…と思うも、安定からさらに一声。
「ね、暗殺者みたいで凄かったよ。まさか屋根から敵の首目がけて…」
「ストーップ!!その話は食事中にやめろ!!」
あ、アサシン…。アサシンなのか…。
刀剣男士だからこそ、異形の遡行軍と戦う術を持っており、敵の命を取るのに躊躇はないんだな。子どもの姿だからと、戦わせるのに抵抗を感じていたが、そう思い込んでしまうことこそ、彼にとって失礼だったのかもしれない。
そしてのスプラッタ話の気配を察知。私も止めようと思ったが、すぐさま加州が反応した。加州は気にするタイプなのね。ちなみに加州の手に持っているおにぎり、こちらも私の握ったおにぎりであった。「主、美味しいよ!」とにっこりされるも、どこで私のおにぎりだと判断したのだろうか。
「んなこたあねえって、買い被らないでくれ」
「いいやそんなことない。…そうだ、今度手合わせしてもらってもいい?」
「おう、いいぜ」
刃物をもつと安定の性格が変わるので、慌てだすも、戦場での安定をもう見たから、どんな感じになるか分かっているはず。説明するのもめんどくさそうだったので、せずに済んで良かった。早速兄弟以外に仲良くなれそうな子が出来て良かった。
改めて、おにぎりを頬張るみんなを眺める。堀川には「まさか主さんが起きてるなんてね」鯰尾には「まさか、俺たちの事心配してました?」なんて軽口を叩かれるも「別に?」と返しておく。
みんな、無事に帰ってきてなにより。だが、それは素直に言えず。