ユーリオンアイス ユーリBL夢

 センスがないから何度やっても無駄。面倒。転べば痛いし、飛ぶのは怖いし、スケートなんてくそくらえだ!転んでは、叱咤されては、やめたいと思う度にリビングレジェンドとなる人の滑りを眺めていた。そうすると、さっきまでの黒々した考えを改めることができた。あんなに綺麗な滑りを見ていたら、心が洗われるようで、見るのはいいな、と。

 リビングレジェンドとなる人、…ヴィクトルはうちのスケート場にヤコフコーチと共に練習しに来ることがあった。生で見た時のあの感動といったら!…俺もあんな風に滑れたら、と期待だけを持って頑張って練習していった。そのおかげか子供の習い事程度のレベルまではもっていけた。ヴィクトルも褒めてくれていたなあ。今思えば、頑張った子供を褒めてあげていただけで、選手になる為のアドバイスなんかはしてくれなかった。
 そう、俺は今ではスケートを諦めていた。きっかけは、おじいさんに連れられてスケート場にやってくる子供。名はユーリという。スケートを上達させるにはセンスもそうだが、努力する才能も必要なのだ、俺は到底あそこまで頑張れない。彼の滑りを見て、己の平凡さを認めるに至る。決して辞めるきっかけを探していた訳ではなかった。家族を食べさせる為に上を目指す子供。全てを吸収しようと幼い体にむち打ち練習に励む姿を見て、親に言われてなんとなく続けていた自分を恥じたのだ。ヴィクトルみたいにに滑れたら、とは思っていたけれど、やっぱりきらきらした滑りを見ている方が好きだった。今でも転ぶのは嫌だし、飛ぶのも怖い。

「ユーリはやっぱり凄いなあ~」
「別に。…つーかスケート辞めたのかよ。根性ねえな」
「はは、そうかも。その代わりにトレーナーになることにしたけどね」
「…そうかよ」

 練習すらきれいに滑って…。でも、感受性に欠けているか。それを補うのが今後の目標だろう。滑り終えてリンクから戻ってくるユーリにタオルを渡してやる。無言でそれを受け取るユーリ。彼は小さい頃から負けん気が強かった。(その内口調も悪くなっていく)端正な容姿、周りからずば抜けた技術を持っているユーリ、何も知らない子は声をかけては、彼の荒々しい一面を見て早々に退散していった。(その中でもミラはあまり気にせず接しているが)それを見かねて大丈夫かと根気よく声をかけて仲良くなったつもりだったが、最近当たりが強い気がする。やっぱり責任が重いからか。オタベックに泣きつこうかな…。俺がスケート辞めたのにそっけないし、一言多いぞ。
 スケートを辞めた俺は、自分のできることを探すことにした。スケート場を継ぐつもりでいたから、せめてトレーナーになれたらいいな。自分でなく、彼らをサポートした方がよっぽどいい。