ツイステ 脳筋夢主の話

異世界トリップしたら脳筋ステ振られた件について

 グリムと談笑しながら教室を移動する最中、体格の良い生徒に肩をぶつけてしまった。

慌てて謝ったのだが、「どこ見て歩いてんだよ」「謝りゃ済むと思ってんのか」とこれまたテンプレートな悪い人の言葉ばかり吐かれる始末。きっと、彼のそばに同じような柄の悪そうな仲間がいなかったり、私の体格が彼以上に屈強だったらこんな事にはなってないのだろう。すみませんを伝え続けるも、次第にニヤニヤと表情を歪ませる一行。こちらの不注意もあるだけに、無視することはできない。だからといってヘコヘコ謝るのは違うような気もする。

「あの、どうしたら許してもらえますか」
「そーだなぁ…10000マドル払ってもらったら許してやっかな」
「すみません、あの、今持ち合わせは200マドルしかなくて…」

 グリムがあからさまに目線を逸らし出す。そう、いつの間にかツナ缶を大量購入されていた。もう1、2個買えそうなのに200マドル残っていたのはグリムの最後の良心か。しばらくモヤシ、ツナ生活の道しか残っていない私だが、財布からなけなしの200マドル差し出すことに。グリムが「オマエ…いいのか!?」と叫ぶも、すべての元凶が今私を諫めるのはどうなのだろうか。オンボロ寮の横に畑作るか…などと考えていると、激昂する生徒の声で我にかえる。

「ふざけんじゃねーぞ!!馬鹿にしてんのか!」

 マドルを差し出した手ごと払いのけようとしたので、一歩下がってからポケットにマドルをしまう。

「いやあの、どうどう…」
「ご愁傷さまだゾ…」

 グリムの声に、どっちが?と思った。生徒が拳を振り上げる。パンチをいなし、伸びきった腕を掴む。力具合が分かっていないけれど、骨が折れない程度に力を込めてみる。生徒の悲鳴、腕の骨が軋む音。仲間も後退りしだしたので、腕を離す。

「よし、早く教室行かないと!」
「お、おう!そうなんだゾ!」

捨て台詞を吐いて走り去っていく人たち。野次馬が感心したような顔で私を見ている。教室へ駆ける中、目をつけられただろうか、その時はグリムが助けてねと伝えるも、「いーや、オマエ一人でなんとかできるんだゾ」と突っぱねられてしまった。

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 魔法使いの学校にトリップした私はそりゃもうバリバリに魔法が使えるもんだと確信していた。そんな希望も虚しく、すぐに学園長から「才能ゼロですね」と断言され、グリムと共にあれよあれよと雑用係…からオンボロ寮の監督生になった。数多の試練(グリム捕獲、幽霊退治、鉱石探し…)を乗り越えた中で気付いたのは、私の物理的な能力がはるかに高くなっていることだった。

 元の世界に帰る方法を探す中、図書室でとある漫画を読んで確信した。ファンタジー世界にトリップしたら、それ専用の能力を与えられるようだ。その漫画は、トリップした時のHOWTO本のようなものだった。主人公が異世界特有の力を得て、異世界や能力の解説役であるパートナーと共に難題を解決していくストーリー。吹き出し内の解説用語の重要度によって文字が太く強調されている。次第に異世界の住民たちにも慕われていき、大団円でおさまるお話であった。異世界トリップして人生が変わったよ!異世界トリップのおかげだね!との締めに、小学生の時に郵便に届く通信講座のメリットをこれでもかと伝える漫画のような既視感を覚えたのは内緒だ。それはさておき、主人公が普通に異世界に永住しているので、漫画の中に帰るヒントは無かった。

話を戻そう、私はこの能力により、なにか築き上げたわけでも、成し遂げたわけでも無いのに、見る人から見れば「おもしれーやつ」になってしまったのである。なんというか、申し訳なさすぎる…。