リオンBL夢 バレンタイン

※アクアリウムの続編

エミリオからチョコが欲しいとねだられた。うん、いいよ、と軽く返事をし、仕事帰りにスイーツの店へ寄ることにした。エミリオから今日は書類の整理だけしたら帰る、と言われ珍しく一人で帰ることになった。あれ以来、初めて一人で屋敷へ帰るなあ。きっと、信じられているのだろう。

スイーツ好きのくせして、変なプライドでスイーツのお店になかなか行けないエミリオ。俺が代わりに買ってこい、という事なのだろうなあと思っていた。

お菓子屋さんに着くと、驚きの光景。いつもはほどほどのお客さんが、店の中をごった返し、バルーンのハートで彩られた店内。客の女の子たちは「手作り用のチョコ買う?それともお店のチョコのがいいかなあ?」やら「チョコ渡す時に告白しちゃおうか、悩んでるんだよね」と友達同士で話し合っている。

「そうか、バレンタイン…」

明日、バレンタインだったような気がする。…まったく縁がなかったから、意識していなかった。そうなんだなあ。ま、俺には関係ないか。長蛇の列の最後尾へ並び、たくさんあると嬉しいだろうから、板チョコを3,4枚買って帰ってきた。普通に買うだけでもかなり時間がかかった。お腹すいた…。ご飯を食べてからエミリオにチョコを渡すとしよう。

「おかえりなさい、ナマエ」
「ただいま、マリアン」

屋敷の玄関をくぐると、マリアンが小走りに駆けてきた。

「エミリオなら、先にご飯を食べて部屋に戻ってるわよ。…あら?その袋」
「うん、エミリオにねだられてお菓子屋さんでチョコを買ってきたんだ」
「そうなの!明日渡すのが楽しみね」
「え、明日?今日渡そうと思ったんだけど…」
「バレンタインデーに渡さないの?」

会話に齟齬があるような気がする。一応、確認してみる。

「マリアンってば、俺がエミリオにバレンタインチョコ渡すって思ってる…?」
「違うの?」
「エミリオと俺が付き合ってると思ってた…?」
「…あら?そうだと思っていたけれど」

マリアンはさっきからずっと首を傾げたままだ。うん、齟齬しかない。エミリオとはそんなつもりで接していない。でも、周りからしたらそういう風に見えるのだろうか…。エミリオの足を引っ張ってないか不安になってきた。

「そんなに俺、エミリオにベタベタしてみえる…?」
「……大変だわ」
「え?」
「ナマエ、今すぐエミリオの部屋へ行ってきて」

先にご飯食べたい…、などと言えない程真剣な表情をされる。マリアンの有無を言わさない雰囲気に押され、エミリオの部屋を訪ねることに。

「…エミリオ~、ちょっと用があるんだけど」

暫しして、エミリオが部屋から顔を出した。

「えっと…おやつのチョコ買ってきた…よ?」

これが正しい選択肢なのかよく分からなくなってきたが、ひとまずチョコを渡そうとした。袋を受け取らないエミリオ。何故だ、と表情を窺う。…エミリオは固まっていた。

「なんで固まるんだよー!バレンタインチョコを期待してたのか?」

俺の言葉にゆっくりと頷くエミリオ。今度は俺が固まる番である。

「ななななんで…そういうのって恋人に贈るやつじゃないの!?」
「お前が告白してきたんじゃなかったのか」
「へ!?」
「ずっと僕の傍にいるって言っただろ、あれは告白じゃなかったのか…?」
「ええ!?」

た、確かに、一悶着済んだ後、改めて「エミリオを支える」って言ったけど!?あれ告白だったっけ!?子犬のように目を潤ませるエミリオに、そういうつもりじゃなかったと、その一言が言えない。言葉に偽りがない分、どう言いくるめたらいいのかわからない。

「ちょ、ちょっと待って…」
「お前は僕が恋人なのは嫌か?」

嫌ではないけど、考えたことなかった…!「嫌じゃないけど」と口ごもるも、間髪入れずに「ならいいだろ、恋人で」とエミリオがばっさり俺を斬ってくる。い、いいのかな…。エミリオがそう言うならそうなのか…?

「エミリオ、いくらナマエが押しに弱いからって、そういう手をつかうのはよくないわ」
「マリアン…!」

話は聞いていた、と言わんばかりに腕組みをしたマリアンが俺たちの間に入ってくれた。

「大丈夫?ナマエ…」
「うう、頭が熱い…。沸騰しそう…」