ロボトミーな本丸管理

※某ゲームをリスペクトした設定

 刀剣男士は神でありながら、人型の付喪神という立ち位置のため、精神のようなものが存在している。

 それが好調であればある程、彼らと契りを交わした審神者の力になる。そして、刀剣男士が戦いで力を発揮しやすくなる。このエネルギーの好循環のために、政府の職員は各本丸に派遣され、刀剣男士の心のケアにあたる。
 基本的には審神者が刀剣から要望など聞き取りを行った上で、本日ケアを担当する男士、ケアの仕方(親しく接するのか、淡々と接するのか、同情的に接するのか…等)の指示を仰ぎ、職員は行動する。
 刀剣によっては毎日、何日かに1回行ったり、刀剣ごとに好むケアの仕方がある。先人の知恵により、刀剣男士についての情報は開示されてきた。だが日々、新たに鍛刀できる男士が増えていく。その度、審神者は政府の職員を刀剣男士に触れ合わせ、情報収集に行い、政府に報告する義務がある。
 逆に刀剣男士の精神状態が悪くなると、先程の好循環が逆回りとなる。担当した職員が██████場合もあるほか。本丸が運営できない状態になりえる。
 それは審神者にとってのデメリットになるため、慎重に指示を行うよう政府が指導している。
 特に刀剣男士のかつての使い手と縁ある戦場に駆り出されれば、精神が安定しづらくなる。その際、ケアを欠かさず行うのが、審神者内での鉄則である。

 マニュアルを読んだ感想は、なんだか大変そうで、危険そうで…これからどうなっちゃうのかなあというもの。マニュアルに黒塗りて。
 お給金が良いからと職員に応募した。1年間の契約で、任期が終わった際には仕事についての記憶は削除される、という怪しすぎる条件をのんだ。というのも、我が家は生まれもっての貧乏で、長女である私はかなり苦労をしてきた。そのため、可愛い妹や弟に望んだ学校に入ってもらいたいが為に危険であろう仕事に身を投じることになる。

 派遣された本丸は、綺麗な女性の審神者が運営していた。大きなお屋敷だというのに清潔感に満ちた、神々しい雰囲気に満ちている。神様がいるんだから、それはそうか。多分、この本丸の運営はうまくいっているんだろうなあ。

「新しい職員の方ですね、はじめまして、私がこの本丸の審神者です。よろしくお願いします。…貴方には仮称で九十九(つくも)という名を授けます。刀剣たちのケアにあたる際はそう名乗るようにしてくださいね。マニュアルでも見たと思うけど、自分の本名は教えちゃダメだめですからね。じゃあ、まずは…三日月宗近のケアをお願いします。優しく接してあげてくださいね。あなたの話を聞かせてあげた方が彼もきっと喜びます。では、突きあたりの部屋の三日月宗近に会いに行ってあげてください。よろしくお願いします」

 スーツ姿の職員さんたちがバタバタと忙しそうな夕方頃。交流を禁止されているため、挨拶もまずそうだな…と思い、審神者さんに挨拶に伺うと、早々にケアを申し付けられた。三日月宗近って結構有名な刀だよな。そんな刀を新人の私に任せて良いのやら…。
 変な汗が出てきたが、突き当たりの部屋へ向かう。

「すみません、政府の職員の九十九と申します。三日月宗近様、お部屋に入ってもよろしいでしょうか?」
「あぁ、入るといい」

 部屋に入ると、見目麗しい青年がそこにいた。綺麗な装束を身につけ、こちらを向いて座っている。見惚れながら、すかさず正座をして頭を下げる。

「はじめまして、私…」
「ああ、座布団でもひくか?畳で正座も辛かろう」

「よっと」と腰を上げて三日月宗近様は部屋の隅に積んであった座布団を渡してくれた。

「あっ、ありがとうございます!失礼しますね」

 受け取った座布団を敷くと、改めて挨拶をする。

「新しく入った九十九と申します。よろしくお願いします、三日月宗近様」
「あぁ、よろしくな。「九十九」。あと、「様」は今後つけなくて構わん。なんだか距離を置かれている心地になる」
「えっ、いいんですか?…じゃあ、さん付け…でもよろしいですか?」
「あぁ、今はそれでいい」

 三日月さんが微笑む。お顔が良すぎて直視出来なくなるのを堪えるのに必死である。

「審神者からはどう言われてこちらに来たのか教えてくれるか?」
「私の話をするように…と言われました」
「そうだな。それがいい。俺もお前の話が聞きたい」

 にこにこ顔の三日月さんだが、生憎話せるような楽しいエピソードがすぐには思いつかない…。

「ちょっと待ってくださいね…。…私、妹と弟がいるんですけど、二人ともとても可愛くて仕方ないんです」
「家族の話か。兄弟がいるんだな」
「はい!二人とも素直な子に育って、私なんかを慕ってくれて…この前の誕生日は、内緒でバイトしてたのか、可愛い腕時計をプレゼントしてくれました!高い買い物だったろうに、バイトなんてして、お姉ちゃんには感謝してるからって、…本当にできた弟と妹で…」
「そうか。九十九が兄弟を心から可愛がっているのが目に浮かぶようだ」
「はい!」

 そういえば、今回の仕事の内容については、お父さんとお母さんだけにしか話してないんだった。弟と妹には、心配させたくなくて、仕事があるから1年会えなくなるとだけ伝えた。2人にすっごい泣きつかれたなあ。たまに連絡くれるよね!?と言っていた二人。自分のスマホはもちろん、プレゼントされた時計ですら本丸に持っていけず、支給された文具を使用しての手紙だけなら検閲する必要があるが、家族に送ってもよいと言われた時は、とてもホッとした。(もちろん仕事の内容については書くなと言わている)
 家族からの手紙も検閲を受けてから、受け取ることができる。絶対毎週書くから!と言っていたので、お母さんに宛名を書いてもらい、手紙を送ってもらうよう伝えている。

――――

「政府より配布した三日月宗近が職員1名と行方不明になりましたが、この結果で宜しかったのですか?」
「えぇ、鍛刀した三日月がいるから、本丸のために犠牲…でしょうか?まあ、一緒にいなくなってもらいました。そのおかげか審神者としての力も満ち満ちています」
「それはよいことです」
「何度か新人の子をあの三日月にあてがったのですが、1年経って帰っていく子ばかりだったんです。でも、ここにきた最初に三日月が言っていた通り、気に入った子を連れて行ってしまいましたね。とてもよい子だったのでしょう」