結城理「二人ぴったりくっついて」

 暖房で部屋が温まるまでの間の辛抱。クッションの上に座って、今日の宿題を進めることにした。そこらへんに置いてあったひざ掛けを引っ張って、膝の上へ。

 自室のうっすいカーペットも、もこもことした絨毯に替えたい所。だけど、買って持って帰るなんてこと出来ないし、ネットショッピングで注文して届いたとしても、すぐに絨毯を替える作業に移れるだろうか。…いや、理がいればなんとなりそう。私は名案を思い付いたごとく、大きく頷いた。頼めば、私ごとカーペットを引っぺがしてくれそう。そうしたらいやがおうにも掃除機をかけ、絨毯をひくことになる。
 目の前にある用紙の内容に集中することから逃れ、だらだら、シャーペンで綴る字もゆっくりと記入していると、ノック音が鳴る。浮つきそうになる気持ちを抑えながら「はあい」と返事をすれば、静かにドアが開いた。

「もう今日の宿題、済んだ?」
「まだ」

 聞きなれた声に、やっと顔をあげる。向かいに座るかと思いきや、私の向こうを通り過ぎていく。ベッドにでも座るのだろうか。かと思いきや、私のすぐ後ろに腰を降ろしたようで、伸ばした足の外側からすらりとした足が片一方ずつ伸びてきた。果てには、後ろから腕が私の腹に巻き付く。要するに、理に包み込まれた、ということ。

「理?」

 どこか寄り道してから帰ってきたばかりなのだろう。理の足の上に私の足を乗せてみたが、靴下越しの足の冷たいこと。抱き着かれた手のひらも触ってみてもやっぱりそんな感じ。制服から厚着の服に着替えたとはいえ、足も手も冷えきっていた。肌寒い時期だからか、物理的に人恋しいようだ。…といっても、私もそんなに温まっていないけれど。
 でも、こうして二人ぴたりとくっついていると、じわじわ表面から、内の内へと暖かくなっていく感覚に陥る。

「そこ違うよ」
「え、本当?……ほんとだ!ありがとー」

 私を抱きしめつつも宿題を見ていたようだ。間違った箇所を指摘できるとは、やはり出来る弟である。消しゴムで間違いを消して、回答を修正する。
 定期テストの上位勢に食い込んできた理。私は理に勉強を教えてもらうことが多くなった。姉とは何なのか。(理曰く、私に勉強を教えるのが楽しいらしい、そのおかげでバリバリ勉強している模様)
 今の状況も、はたから見れば何なのだ、という感じだが、いつの間にか理のペースに飲まれていた。