有里湊 結婚してもいいし、しなくてもいい

夢見心地だった。二人きりで結婚式…のような雰囲気になったものの、やはりボスは待っていた。アイギスにちょっと待った!みたいに言われて目が覚めたけれど。

ボスは倒したが、まだ帰れそうにない。それに、次の探索場所が凄い怖そうだが、大丈夫なのだろうか。そんな中で、何故かみんなから恋人同士になったことを祝福され、お祝いパーティが開かれてしまった。みんなには隠し通しているはずだったのにどうして…。あれよあれよとパーティの主役としてパーティハットを被らされ、呆然とする私。
「ナマエ、ごめんね?選択肢をナマエが運命の相手になるように選んでたんだ。迷宮の奥にたどり着いた時、ナマエに何があるか分からなかったから、みんなにサポートをお願いしてて…」

同じくお揃いのパーティハットを乗せた湊君が、心底申し訳なさそうに謝ってくれた。そんな訳があったのか。

「全然大丈夫!そうだったんだね!…でもパーティにはびっくりしちゃった。飾りつけまで準備してくれてたんだね」
「本当だね。みんなが僕らの為に準備してくれるなんて…嬉しいね」
「うん!」

もし元の場所に帰れるようになったらと、お別れ会も兼ねてパーティの準備をしてくれたようだ。空き教室を飾りつけして、教室の四方に模擬店の料理をたくさん並べてある。(お姫様抱っこパネルもいつの間にか持って帰ってきたようだ。合成写真とはいえ凄い恥ずかしい)自分の紙皿に好きな料理を盛る、ビュッフェスタイルなパーティ。ゴールインおめでとう!と描かれた黒板の前に立たされた私達。この会場も家族に連れられて見たことのある、結婚式のように思えたのは内緒だ。
湊君の手には、伊織君や花村君が料理を取り分けた大盛の紙皿。ほぼU字に曲がっている紙皿が料理の重みに耐えられているのか凄い…。片手でそれを持っている湊君も凄い…。玲ちゃん同様、細い体のどこに収まるのか、すらほらと食べていくので、もう紙皿が安定しだしている。

「おめでとう!ナマエ、リーダー」
「やっとこさゴールインしてこっちもホッとしたぞ~オイ」

笑顔のゆかりちゃんと伊織君がこちらへ話しかけに来てくれた。ゴールインって!…でも、「なんだか照れくさいね」とお互いに顔を見合わせて笑ってしまった。

「ボス戦前に告白して付き合ってたんだって?ナマエったらやるじゃん」

数々の羞恥の記憶が駆け巡り、思い切りむせこむ。慌てて背中を撫でてくれるゆかりちゃん。かすれた声でありがとうを伝える。

「…ゆかりッチ、言っちゃ駄目なやつだったっぽいな」
「大丈夫?ナマエ…。さっきサブリーダーから聞いたんだけど、今の、そんな駄目だった?」
「悠、こっち来て」

リーダーからのお呼び出しがかかり、強張った顔の悠君が駆けつける。

「悪い。ナマエ…と、リーダー」
「悠ってば、本当に悪いと思ってるの…?」
「すまない、あの時のナマエの健闘が微笑ましくて、するっとしゃべってしまった…。本当にすまない」
「するっと?」

崩れ落ちそうになる体をどうにか抑える。湊君が険しい顔で追及する。

「まるで妹の愛らしい姿を自慢するような……そう、誇らしい気持ちでついしゃべってしまった…、俺は、なんてことを…」

顔をしかめて、凄い理由を説明しだしたぞ。しかも、長い。悠君が心配になってきた。

「悠君、何を言ってるの、大丈夫…?」
「愛らしいには完全に同意だ。でも、何回も言うけれど人の恋路に首を突っ込まないでくれない」
「えっ、え…!?湊君!?」

湊君は教卓の上に紙皿を置くと、私を抱き寄せた。え!?何!?夢!?湊君がこんなに大胆なことがあっただろうか。みんなが注目しだして、パニックになりそう。

「ナマエ、お前は可愛い!もっと自信を持て!」
「僕だってそれは知ってる。でも、ナマエはナマエのままでいい」
「……悠、ノリノリになりすぎじゃねえか?大丈夫かよ」

確かに、何かおかしい。密着度と、腰に手を回されてる感触に慌てふためく中、風花ちゃんの声が響いた。

「あ、あの…ナマエちゃん!二人とも、混乱してます…」
「あーっ!本当だ!さっきのボス戦のせいかも!」

状態異常にかかっている!?まさかの展開に、二人を見比べる。さっきボス戦から戻ってきたばかりで休んでいなかったが…。そういえば、あの牧師のボス、戦闘中にプリンパを唱えていたような。

「パーティを一旦中止にするぞ。伊織、花村、二人を保健室に運んでくれないか」

「ナマエちゃんがリーダーのものになるなんて悲しいクマッ~!!」
「クマ君も混乱してる…?」
「……通常運転じゃない?」

「みんな楽しそうで良かったね!善!」
「玲…、そうだな…」