アスタリア世界へトリップしてミクと会うパターン

※アスタリア世界、カノンノ主人公の章の話

 ほの暗い洞窟に私は居た。ぴちょんと天井を伝う水が落ちる音、肌寒さに腕が粟立つ。おもわず己の腕を抱きしめると、目の前に台座に刺さった不気味な大剣があるのに気付く。周りの壁のくぼみに松明が、丁度台座を照らすように明りを灯していた。…禍々しい程に黒い剣だ。しげしげと眺めていた所、男の声が剣の方から聞こえた。「我が名はミクトラン」姿見えぬ男は名乗る。
 「貴様はディセンダー、我が僕」と早々に僕に任命されてしまった。名前違う、私はナマエです。訂正すると、「ふん」とミクトランは鼻を鳴らす。

「ディセンダーは名前ではない。『役割』」だ」

 役割…?その役割とは?未だ人影は見えず、仕方なく剣の方へ向いて話しかける。

「救世主だ」

 やだ…何それ、かっこいい。半笑いしながらも、夢見心地につぶやいた。なんたってこんな夢みたいな状況、現実ではなさそうだし。

「私を抜け、さすれば道は開かれん」

 はいはい、勇者の剣かな?台座に歩み寄り、素直に柄に手をかける。触れた瞬間、ぴりっとした刺激が手の平に走った。静電気…?首を傾げた後、抜けるか分からない程大きい剣を抜ことうと気合をいれて……。……思いのほかすんなり抜けてしまった。驚きの軽さだ。試しに振ってみるが、体の一部のように難なく振れてしまう。

「……ッ」

 焦ったような声が剣から聞こえた。

「何故だ、何故乗り移れん…ッ!」

 あのミクトランさんの声ではないか。まさか、この剣から――?それに不穏な事を言われたし…。乗り移る?私に、だろうか?そう考えたら怖くなり、咄嗟に剣から手を離す。地に転がる大剣。「やめろッ!!私を放り投げるな!!」とすかさずミクトランさんの悲鳴。なんなのよ…。白い眼を地面の剣に向けると、ここから立ち去ることにした。ここに留まっても仕方ない。

「置いていくなぁッ!」

 最初と打って変わって情けない声だ。ううむ、なんだか可哀そうになってきたが…心を鬼にして、いざさらば!
 乗り移るといい、あれは霊的な何かだったのだろうか?と考えながら、台座とは逆方向へ進む。すぐになだらかな坂道が現れた。道の途中にも松明があり、地面を確認しながら進むことが出来る。
 剣の幽霊。兵士だったのだろうか、戦いで死に、生前の悔いを晴らさんと私を呼び出した……。憶測でストーリーを作る。この先一体どこに通じるのだろうか…。

 そして行き止まりにたどり着き、呆然とする。い、いや、なにか仕掛けがあるだろうと思いたち、壁にすがりつく。ぺたぺたとごつごつした表面に手をつけ、押した。びくともせず。表面に記された暗号的な文字もなく、私は詰んだ事に気づく。どうしたものか、ミクトランさんなら何かしっているのかもしれな…、やっぱり台座の所に出口があるのかもしれない。どうも彼とは関わりたくない。……でも戻るのめんどくさい。ぎゅる、と下腹部から腹の音。お腹すいた。…どうも、これは夢ではないようだ、と薄々感づいてきた。
 仕方なく道を降り、例の台座の間に戻る。

「フン、戻るだろうと思っていた。…とりあえず私を元の台座に戻せ」

最初の勢いを取り戻した地面のミクトランさんの一声を無視し、台座の間を捜索する。…どう見ても通路らしきものはないが、隠し通路があったりして……。十数分、壁を押したり、松明のあるくぼみを調べた結果、隠し通路はないことがわかった!その間もミクトランさんは「無視するな」やら「おい」やら声をかけてきたが、…仕方なく今応えることにした。

「やっと我が僕として応える気になったか」

 さよなら。

「待て待て待てぃ。…私なしにここから出る事は叶わんぞ」

 それを最初に言ってくれ。いや、まさかはったりではないだろうな?

「はったりではない。ここから出るには壁の封印を解かなくてはならない」

ふ、封印ですか。封印らしき痕跡はなかったけどなあ…。

「いいから行き止まりまで私を持って行け!……そうすれば外に出してやる」

 え…持たないといけないの…?やだー。切実にそんな感じだが、他に脱出する方法もない。乗っ取られる可能性があるか分からないが、地に落ちた彼を持つことにした。屈んで恐る恐る柄をもつ。…やはり軽い。実は中身スカスカ?思わずそう呟けば、「貴様…!!口を慎め!王たる私に中身スカスカなどッ…!!」と激怒されてしまった。頭カラッポ的な意味で捉えたようだ。沸点低すぎ…?謝れ!私に土下座しろ!!とその内キレだしたが、やっぱり置いていくか…とわざと呟けば、おとなしくなった。
 抜き身のままミクトランさんをもって、お互い無言のまま行き止まりまで歩く。この間、やはり「乗っ取り」を懸念し、聞いてみることにした。最初に手に取った時の、乗っ取れなかった発言はどういうことだ。

「……知らん」

 こ、この野郎…。脱出したら即捨ててやる…。大剣をにらみつけ、さらに進む。暫くすると行き止まりについた。さ、どうすりゃいいんですかミクトランさん。剣を目の高さまでやって話しかける。

「…壁から離れろ。そこから意識を私に集中させ、デモンズランスと唱えてみろ」

 なにそれ魔法?叫ばないといけないの?……こうなったらとことんやってやる。意識を眼前に掲げたミクトランに向け、叫ぶ。
 体から少し力が抜ける感覚と共に。頭上から壁にめがけて、漆黒の槍が放たれた。壁は無残に崩れ、この場も地響きと共に揺れる。え?封印を解くっていうか破壊???

「封印は解かれた」

 いや、破壊ですよね。というか、さっきからすごい地面が揺れて、今にもこの洞窟崩れ落ちそうなんですけど…。

「ならば走れ」

 走ります!はい!!がれきを登って、行けなかった向こうへと着地する。ここまでと同じような坂道を上へと走る。水が天井から滴り落ちてくる。嫌な予感しかしない。走っている内に壁には亀裂が入り、洞窟らしくないコンクリートに塗装されつつあるのにも気を留める暇もない。後ろから濁流が流れこむ音がしているけど、振り返れない。

「やっと入口か」

 洞窟を抜け、広い研究室のような部屋の突き当り、巨大な金属の扉にぶつかる。扉をたたく、切れ目から開こうとするも、開かない。危機的状況にただただ唯一の出口であろう扉に向かっては、半泣きになる私に声を響く。

「フ、周りを見渡せ、馬鹿者。あのポッドに乗り込め」

 上機嫌な声色のミクトランの声になすすべもなく従い、辺りを見渡す。丁度横に4個程、人が乗り込めそうな細長い卵型の機械が置いてあった。慌てて駆け込むと、起動したのか、自動的に蓋がしまった。操作するボタンはなく、このまま乗ったままでいいのだろうか。迫りくる死への恐怖にミクトランの柄を抱くように、握りしめた。

 機械の窓から見える洞窟は、今いる部屋の天井からも水が漏れ出ている。はやく、動け、動け。やっと機械的な起動音と共に、「脱出ポッドの準備OK、後数十秒程で発射スタートするわよ~」と女性の声の通信音がのんびりナビゲートする。元来た道から水がこの部屋に広がっている。早く。早く。「…発射スタンバイ~、5、4、3、2、1…」体が浮き上がった。いつの間にか、水中に放り込まれていた。下の方をのぞくと、巨大な岩場に四角の穴が開いている。みるみる内にそれは遠くなり、ポッドは水をまきあげるように、上へ、上へと進んでいた。

そして、海かどこかへポッドごと漂流することとなる。
そうだ、ミクトランさんをオールにしよう。